進化し続けるシニカルなロックの最高峰 トム・ヨーク 2/2

ミュージシャン

今回の記事では、トム・ヨーク及び彼がフロントマンを務めるバンド レディオヘッドのおすすめアルバムを時系列にレビューしていきます。

最高評価は☆×5つ。★は0.5点分です。
「レディオヘッドって小難しそう」と思って聴いたことのない方のために、入門最適度も合わせて載せていきます。

Pablo Honey/パブロ・ハニー

サウンドも歌詞も、青臭さを隠せないピュアなデビューアルバム。
グランジに対するイギリスからの返答かのように扱われましたが、激しさ薄めでメロディーが目立つあたりは、ブリティッシュロックの伝統を感じさせ、個性が見られます。とはいえ、クオリティは凡庸の域を出ておらず、バンドのその後の活躍がなければ忘れさられていたかもしれません。出世作のクリープすら、有名なサビ前の一撃がなければ、良くできたポップソングに聞こえます。
1曲だけ聴くなら、#2 Creep

評価☆☆☆ 入門最適度☆☆☆★

Itch

1994年6月に日本限定でリリースされた8曲入りEP。
パブロ・ハニー時代のB面集といった内容で、ライブバージョンやアコースティックバージョンを多く収録しています。ファンであればもちろん興味深いと思いますが、初期の楽器はレディオヘッドの中では再現が容易なので、あまりありがたみがないと思います。
1曲だけ聴くなら、#3 Faithless, the Wonder Boy

評価☆☆ 入門最適度☆☆☆

My Iron Lung

1994年9月にリリースされた8曲入りEP。
2ndアルバム ザ・ベンズからの先行シングルである表題曲とともに、アルバムからのアウトテイクが収録されています。クリープへの愛憎入り混じった感情があふれる表題曲を始め、いずれの楽曲も2ndでの飛躍を十分に予感させるクオリティで、アルバム収録曲にも引けを取りません。
1曲だけ聴くなら、#5 Permanent Daylight

評価☆☆☆☆ 入門最適度☆☆☆☆

The Bends/ザ・ベンズ

レディオヘッドを飛躍させた傑作2nd。
ここからバンドは孤高の道を歩み始めました。再生した瞬間から音像の広がりは明白で、激しいギターの入れどころ、アコースティック主体の楽曲の繊細さなど、あらゆる表現レベルが1stから劇的に成熟しています。いくつか印象に残らない曲もありますが、バンドの分岐点として、また入門編としても必聴の一枚。
1曲だけ聴くなら、#7 Just

評価☆☆☆☆ 入門最適度☆☆☆☆☆

OK Computer/OK コンピューター

ロック史に残る名盤であり、90年代を代表する一枚。
均一化され、無個性になった人々が暮らす世界はさながら無機質で冷たいコンピューターの世界のようです。世紀末を迎えた人々が、ものすごい速さで進化していく世界に胸躍りながらも、心の中に広げていた漠然とした不安。それをブラックで厭世的な歌詞と荒涼としたサウンドが見事に表現しています。高いアート性と強烈なメッセージ、ポップミュージックとしての最低限のキャッチーさを絶妙なバランスで成立させた名作です。
1曲だけ聴くなら、#2 Paranoid Android

評価☆☆☆☆☆ 入門最適度☆☆☆☆

Airbag/How Am I Driving?

1998年4月にリリースされた7曲入りEP。
3rdアルバム OK computerからのB面集的な内容です。3rdのコンセプチュアルなテーマとも世界観を共有していて、統一感を持っており、曲自体のクオリティもまずまずです。しかし、完成したアルバムを聴くと、入る余地がなく、外されたのも妥当な判断と感じます。
1曲だけ聴くなら、#5 Polyethylene(Part1&2)

評価☆☆☆★ 入門最適度☆☆☆

KID A/キッド A

世界に衝撃を与え、シーンの流れを変えた4thアルバム。
レディオヘッドが優れていたのは、このアルバムを難解で独りよがりなアート作品にはしなかったことです。たしかに既存のロックやポップミュージックのフォーマットからは外れていたものの、ポップさを完全に失うことはなく、絶妙なバランスを保っています。それにより、時を経てリリース時のインパクトが失われてからも、作品自体のクオリティが評価され続けているのだと思います。
1曲だけ聴くなら、#1 Everything in Its Right Place

評価☆☆☆☆★ 入門最適度☆☆★

Amnesiac/アムニージアック

Kid Aの姉妹盤であり、コインの裏表である5thアルバム。
同じレコーディングセッションで収録されたため、当然ながら楽曲は同じ雰囲気を持っています。ただ、こちらの方がよりフィジカルでキャッチーな印象です。実際に前作では行われなかったシングルカットやMVの制作がされています。曲単位では前作よりも優れていますが、アルバムとしての統一感と完成度は劣ると思います。
1曲だけ聴くなら、#6 Knives Out

評価☆☆☆☆ 入門最適度☆☆★

I Might Be Wrong:Live Recordings

2001年11月にリリースされたライブアルバム。
基本的にKid AとAmmnesiacからの選曲となっています。ライブで生楽器を使って演奏されることにより、無機質だった曲に血が通い、新たな一面を見せてくれます。その点、ライブの魅力を伝えるには最高の選曲です。今作とAmmnesiacを聴けば、3rdから4thへの道程を垣間見ることができます。
1曲だけ聴くなら、#2 I Might Be Wrong

評価☆☆☆☆ 入門最適度☆☆☆

Hail to the Theif/ヘイル・トゥ・ザ・シーフ

ロックの肉体性を取り戻した6thアルバム。
前2作で電子音楽を大胆に導入し、それらをライブで再現したことで、レディオヘッドはロックを再創造したのかもしれません。単に90年代の作風に回帰するのではなく、ロックから離れたからこそ出せる音を鳴らしています。そして嘆き悲しむ厭世的な態度から、怒りを放つ姿勢となったことも大きな変化でした。まだ取り止めがない印象も受けますが、あふれ出る感情とアイディアをそのまま詰め込んだようなバラエティ豊かな一枚。
1曲だけ聴くなら、#9 There There

評価☆☆☆☆ 入門最適度☆☆☆★

The Eraser/ジ・イレイザー

トム・ヨーク初のソロアルバム。
レディオヘッドとしての前作がロックを再獲得したものだっただけに、電子音楽をより突き詰めたような内容はトムの嗜好を表しているようで、1人で嬉々としてPCに向かって作業する姿が目に浮かびます。楽曲のクオリティは今ひとつですが、レディオヘッドを含めた10年代のトムの創作の方向性を示しているという意味で興味深い作品ではあります。
1曲だけ聴くなら、#8 Harrowdown Hill

評価☆☆☆★ 入門最適度☆☆★

In Rainbows/イン・レインボウズ

キャリアを包括する集大成的な7thアルバム。
音楽的な探求を続けてきたからこその幅広い楽曲が聴け、そのどれもが高いクオリティでコンパクトにまとまっています。90年代の不安、00年前後の絶望感、00年代前半の怒りを通過し、それらを失うことはないものの、全てを達観して穏やかに見つめる視点を獲得したような印象。それゆえの温かみすら感じるのは、レディオヘッドの歴史の中で初めてのことでした。00年代を代表する名盤です。
1曲だけ聴くなら、#3 Nude

評価☆☆☆☆★ 入門最適度☆☆☆☆★

The King of Limbs/ザ・キング・オブ・リムズ

トムがソロで志向した音楽をバンドとして発展させたようなレディオヘッドの8thアルバム。
電子音にあふれながらもトムの歌声が埋もれずに美しく響いています。過去にないほどミニマルなつくりは10年代以降にバンドが向かう方向性を示していますが、この時点ではまだバンドとしてのシナジーを生み出すには至っていないような印象です。
1曲だけ聴くなら、#5 Lotus Flower

評価☆☆☆ 入門最適度☆★

Amok

トムがアトムズ・フォー・ピースとして、2013年2月にリリースしたアルバム。
一流のプレーヤーが集まっていますが、あくまでトムのソロアルバムをライブで再現するために始まったバンドであるためか、ジ・イレイザーの延長線からは外れていません。これがレディオヘッドの8thと9thの間にリリースされたことは興味深く、今作は「8th×ジ・イレイザー+ビート」といった印象です。
1曲だけ聴くなら、#1Before Your Very Eyes…

評価☆☆☆ 入門最適度☆☆

A Moon Shaped Pool/ア・ムーン・シェイプド・プール

前作の延長線上にある9thアルバム。
電子音とピアノやアコースティックギターなど生の楽器がよりナチュラルに調和し、頭の中に映像を浮かばさせるような音像を作り上げています。90年代からライブで演奏されてきた楽曲 True Love Waits/トゥルー・ラブ・ウェイツが満を持して収録されましたが、このアルバムの雰囲気に合わせて大幅にアレンジされています。ライブで披露されるアコースティックギターを主体としたバージョンの方が個人的には好みですが、アルバムの締めくくりとしてはふさわしい荘厳な印象が与えられています。
1曲だけ聴くなら、#7 Identikit

評価☆☆☆★ 入門最適度☆☆

ANIMA

2019年6月リリースのトム3枚目のソロアルバム。
トムは前年に自身初となる映画のサントラを手掛けています。おそらくはその影響もあり、映画音楽的な仕上がりになっています。しかし、やや一本調子気味で、メリハリにかける印象が強いのは否めません。サスペリアのサントラではピアノを基調とした美しい曲をいくつも披露していた分、10年代の締めくくりとしては物足りないと感じました。

評価☆☆★ 入門最適度☆★



さいごに

いかがでしたか?
50代となった今も、アートとポップの境界に立ってメッセージを発し続けるトム・ヨーク。20年代にはどんな方向に向かうのか、期待して待ちたいと思います。
まずは動画サイトからでも、お気に入りの1曲を見つけて、その曲が収録されているアルバムを聴いてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました