映画公開年別マイベスト 1984年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1984年で、11本の作品が3.0点以上でした。

11位 エルム街の悪夢 3.0 

ジェイソンと並ぶ殺人鬼の代名詞となった名キャラクターのフレディを生み出した人気ホラーシリーズの一作目。
眠ると夢の中で殺されるという設定がまずおもしろく、単純な殺人鬼の怖さだけでなく、眠りという人間にとって避けがたく、そして快楽を伴うものに恐怖を与えた点が良かったです。
ジェイソンやブギーマンといった他の殺人鬼キャラに比べると、フレディという存在はファンタジックでユーモアのある設定なので、殺人を楽しんでいる様子が憎たらしくこそあれ、不気味な怖さは薄かったです。
単に殺すだけでなく、中盤まではじわじわと気味悪がらせる部分と血しぶきをあげる部分とがバランス良く組み合わされているのですが、終盤の現実世界ではホーム・アローン的な展開を繰り広げ、勢い任せの意味不明なラストへと突き進むので笑えました。

10位 ストップ・メイキング・センス 3.0

ポストパンクの代表的なバンドであったトーキング・ヘッズの絶頂期のライブを収めたドキュメンタリー。
ラジカセから流れるドラムループに乗せて弾き語るPsycho Killerに始まり、メンバーが一曲ごとに登場してくる序盤の演出は大所帯でのエアロビダンスに乗せて歌われるLife During Wartimeでハイライトを迎え、デヴィッド・バーンはお馴染みの痙攣したニワトリのようなパフォーマンスで身体の柔らかさと異常な運動量を披露してくれます。
その後もトムトムクラブのコーナーに、能の装束に影響を受けたというブカブカジャケットなどの演出で観客を飽きさせません。
楽曲のクオリティとパフォーマンスの充実ぶりを鑑みると、余計な演出を施さず、観客目線でメンバーを捉え続けることに徹したジョナサン・デミの判断は最善であったと思います。

9位 悪魔の毒々モンスター 3.0

スプラッターコメディの怪作として名高いカルトムービー。
容赦のない人体破壊描写と、徹底した不道徳さに基づくぶっ飛んだ展開とギャグセンスの高さは古臭さを感じさせませんでした。
ちゃんとカメラが向いてからリアクションをとるためのPOV、制作費を抑えるために顔を極力映さない前半のカット割と低予算ながらも工夫をこらして作り上げたことがうかがえて好感が持てました。
ナチスの残党が紛れ込むのは「博士の異常な愛情」、明るい歌を口ずさみながら暴力を働くのは「時計じかけのオレンジ」、扉を破って顔をのぞかせるのは「シャイニング」と、随所にキューブリックのパロディが仕込まれているのも楽しかったです。

8位 フランケンウィニー 3.0

ティム・バートン初期の短編作品。
後のセルフリメイクよりもコンパクトながら、純真無垢な異形の存在への愛着が理解されない者の孤独と、理解しない者の無自覚な暴力というバートンらしい物語のエッセンスは十分詰まっていて素晴らしかったです。
復活シーンは長々とやりすぎな気はしますが、こういう怪奇映画らしい場面を撮るのが作り手の楽しみだったことが伝わってきて微笑ましかったです。
ドナルドダックからキティちゃんまでキャラクターを画面のあちこちに散りばめているのもニヤリとさせられました。
「シャイニング」で知られるシェリー・デュヴァル、「ホーム・アローン」でノッポの泥棒としてお馴染みのダニエル・スターンが夫婦役で、バービー人形とエクササイズする隣人の少女役にソフィア・コッポラ、そして主人公の少年に同年の「ネバーエンディング・ストーリー」で名を知られるバレット・オリヴァーとキャストを見ているだけでも楽しめました。

7位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 3.0

マカロニウエスタンの父セルジオ・レオーネの遺作となったギャング映画の名作。
二人の男の少年期から老年期までの姿を通じて、20〜30年代の昔々のアメリカへの情景を描いた一大叙事詩です。
長尺で冗長に感じる場面がない訳ではないのですが、スリや盗みに始まり密造酒ビジネスへと発展していく裏稼業のサクセスストーリーとして、一人前にロマンスを演じながら結局性欲や所有欲の対象としてしか女性を見られない哀れな男のラブストーリーとして、そして何よりそれぞれの信念に生きた男たちの友情の物語として見どころが詰まっていて、三つの時代を自在に行き来する飽きさせない語り口が秀逸でした。
特に少年期のパートのノスタルジックな雰囲気を素晴らしく感じたのですが、そこはあくまでバックボーンであるのが残念でした。
終盤で銃を前に主人公が選択を迫られるシーンでの少年時代のフラッシュバックは珍しくクドい演出なのですが、3時間を共にしてきた後ではしっかり涙腺を刺激されるのがお見事でした。

6位 ビバリーヒルズ・コップ 3.0

エディ・マーフィーを一躍スターダムに押し上げた大ヒットシリーズの一作目。
口八丁手八丁な主人公に対して、ビバリーヒルズの刑事たちは善人ではあるものの、徹底して間抜けな存在として描かれているあたり、白人よりも強く賢く魅力的な黒人の主人公像を確立しようとするハリウッドにおける新しい風を感じられました。
とはいえ主人公の行動は明らかにやりすぎで無鉄砲すぎるのですが、それでも何となくどうにかなってしまう展開にはコメディとしてのおもしろさだけでなく、80年代らしい作り手の能天気さも感じられました。

5位 グレムリン 3.0

80年代の作品によくある、作品自体よりもキャラクターの方が有名なパターンの一つ。
あのかわいい生き物の名前が結局ギズモなのかモグワイなのかグレムリンなのか混乱することを除けば、極めて単純明快なストーリーです。
ファンタジックな設定にキャラクターの良さ、クリスマスの雰囲気に青春もの的な要素とファミリームービーとして文句なしですが、悪者たちのビジュアルとやられっぷりは意外にもかなりグロくて、監督の悪趣味さがうかがえます。

4位 ターミネーター 3.5

シュワちゃんの演技力の乏しさを逆手に取り、映画史上屈指の悪役を生み出した傑作SFホラーアクション。
そのビジュアルはもちろん、散り際のしぶとさも強烈なインパクトでした。
機械に支配された未来の世界観や、タイムパラドックスを避けては通れない設定を深読みしようとするよりは、追いかけっこというシンプルな基本構造にフォーカスして観る方がその展開のおもしろさを楽しめる気がします。

3位 パリ、テキサス 4.0

ロードムービーの名手ヴィム・ヴェンダースによる傑作です。
変わり者の兄と車での長旅で心を通わせていく序盤の展開はまるで「レインマン」のようでした。
突然現れた実の父に息子が戸惑うように、主人公もまた父親像を探りながら、二人は距離を縮めていきます。
道路をはさんでの下校、ヒューストンへの旅で失われた親子の4年間を徐々に埋めていく過程は心温まりました。
移動が心の溝を埋めるキーになっており、マジックミラー越しにいくら会話をしたところで、その溝は埋まっていかない虚しさが印象的でした。
育ての親の複雑な心境を置き去りにしているのは気になりましたが、安易なハッピーエンドには向かわず、壊れてしまった愛の後片付けをするような結末が良かったです。

2位 アマデウス 4.0

人類史上もっとも有名な音楽家の1人モーツァルトの半生をそのライバルであり理解者であり天敵であったサリエリの視点から描いた傑作ドラマ。
テーマとなっているのは秀才から見た天才への嫉妬と憧れであり、それが憎しみへと変わっていくと同時に嫌というほどその才能を思い知らされる悲劇が見事に描かれています。
サリエリも凡人ではなかったからこそ、モーツァルトの凄さが他の誰よりも分かり、レクイエムを共に完成させるシーンでは憎しみを超越した2つの才能の共鳴が感動的でした。
モーツァルトにとっての父親や妻、そして音楽の創作に対する思いの描き方が中途半端で中盤やや停滞している気がしますが、サリエリの視点へと再び戻り、偉大すぎる才能に触れてしまったことの呪縛から生涯逃れられなかった哀しい結末が心に残りました。

1位 ストレンジャー・ザン・パラダイス 4.0

ジム・ジャームッシュの出世作にしてインディーズ映画史に残る金字塔。
あらゆる思惑が噛み合わず、何事も意図したようには進まない奇妙で可笑しな物語です。
映像という表現手法の最大の特徴であるモンタージュによる効果を捨て去った全編ワンシーンワンカットは、作り手にとってフィルムのコストと編集の手間を削減できるリーズナブルな手法である一方で、一つ一つのカットに計算された構図とカメラワーク、リズムを生み出す演技の間がなければ単調かつ冗長になることを避けられないと思うのですが、それを素晴らしいセンスと準備によって達成しています。
そしてそんな形式のユニークさだけでなく、内容にも独自性があふれていることが素晴らしく、劇的なエピソードを描かず、物語のパンの耳的な部分を繋ぎ合わせて心情の変化と関係性の進捗を見せるアプローチが良かったです。
特にシニカルな笑いを誘うラスト3シーンはすれ違うコミュニケーションを描いた今作の締めくくりとしてこの上ないエンディングでした。


いかがでしたでしょうか。
1984年はハリウッドのヒット作から、名匠の代表作まで、数多くの傑作が生まれた年でした。
次回の記事では、1991年を取り上げます。

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