映画公開年別マイベスト 2002年

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今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2002年で、17本の作品が3.0点以上でした。

17位 10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 3.0

名だたる名匠たちが時をテーマに10分間の尺で撮り上げた短編のオムニバスプロジェクト。
冒頭に引用される哲人皇帝の言葉が見事にテーマを言い表した後、各自が映像作家としての個性を驚くほど自覚的に詰め込んだ短編たちが観られるのは楽しかったです。
カウリスマキはいつも通り無表情な人々のシュールなやり取りと中年カップルの淡々としたロマンスを描きます。
ヴィクトル・エリセは救われた赤ん坊の命と第二次大戦下で侵攻を続けるナチスの脅威を対比して見せ、ヘルツォークは時代に取り残された南米の部族のドキュメントを通じて文明が人に与えた価値を問いかけます。
ジャームッシュはワンシチュエーションでオフビートな笑いを生み出し、ヴェンダースはひたすら車を走らせます。
スパイク・リーが大統領選挙を題材に政治的主張を繰り広げる一方で、カイコーは幻想的で儚い物語をユーモアを交えて描きます。
個人的にはエリセの美しい映像とヘルツォークのメッセージ性がベストでした。

16位 インファナル・アフェア 3.0

マフィアへの潜入捜査官と警察に潜り込んだマフィアのスパイという対照的な二人のそれぞれの企みと苦悩を描いた傑作クライムサスペンス。
スコセッシによるリメイク「ディパーテッド」がオスカーを取りましたが、演出のタッチこそ違うものの、ストーリーの運びもエピソードもほとんどそのままであることからも、本作のプロットがいかに優れているか分かります。
その演出のタッチに関しては、暴力的な描写を生々しくリアルに描くスコセッシと比べ、今作はより情緒的で垢抜けない演出なので好みが別れそうなところです。
どちらも甲乙つけがたく、スコセッシ版は終わりなく続く暴力の連鎖への虚しさを、オリジナルは抜け出せない宿命への哀しみを強く感じました。

15位 トランスポーター 3.0

ジェイソン・ステイサムが主演級のアクション俳優としてのキャリアを登り始めるきっかけとなった人気カーアクションシリーズの第一弾。
ストーリーは凡庸ですが、自らにルールを課す寡黙な運び屋というキャラクター設定が良くて楽しめました。
思ったよりもカーチェイスが少ないのは残念でしたが、その分一対多数のシチュエーションが多い戦闘シーンが充実していました。
単なる銃撃戦や殴り合いにせず、コンテナの間の狭いスペースで戦ったり、オイルまみれになったりと、状況設定に工夫が見られて良かったです。
とはいえ、終盤トラックの荷台にパラシュートで降り立った時はさすがにやりすぎだと思いましたが、リュック・ベッソンが製作と脚本を担当したとすれば妙に納得できました。

14位 ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 3.0

名作ファンタジー文学の映画化第二弾。
三部作の二作目は物語としては繋ぎの意味合いが強くなり、盛り上がりに欠けがちですが、今作もその例に漏れず最終局面に向けた状況のセッティング感は否めませんでした。
ただ盛り上がりに欠けたかと言うとそんなことはなく、前半と終盤にしっかり見せ場を作るあたりは構成としてよく計算されていますし、戦闘シーンのスケール感を徐々に上げていくのもうまかったです。
一応ストーリーの主軸であるはずの指輪を持った主人公の旅が今ひとつ魅力に乏しく、後半にはすっかり存在感を失ってしまうのは残念でした。

13位 25時 3.0

ブラックムービーの旗手スパイク・リーがエドワード・ノートンを主演に迎えたクライムドラマ。
キャスティングに加え、人種問題をメインテーマに据えないことからもテーマ性の広がりを感じさせます。
9.11を経たことで黒人と白人の間だけでなく、あらゆる人種、文化、階級の間での融和を求める叫びは鏡の中の自分が全方位的に啖呵を切るシーンと終盤にそれを受けるシーンで如実に表れており印象的でした。
しかし主人公が残された時間で何を感じ、周囲の人々にどんな変化が生じるかという点が、内包するテーマが広がった代償としてやや薄味になっているのは残念でした。
犯罪者である主人公の罪を棚に上げ、愛情深く権力にも屈しない正義感あふれる好青年かのように見せてしまったことで、因果応報の負の連鎖を断ち切ろうとするドラマとしての説得力を弱めているのはもったいなかったです。

12位 マイノリティ・リポート 3.0

犯罪は予知され、未然に防がれるようになった近未来を舞台にしたSFサスペンス。
巻き込まれ、追われながらも、手がかりを見つけて状況を打開しようと奔走する主人公の描写には、ヒッチコック直系のサスペンス演出が見てとれました。
公開当時は、娯楽作にしてはシリアスな作風と少し分かりづらいストーリーのせいか、巨匠とスターが組んだにも関わらず地味な扱いを受けていた印象です。
しかし今作で描かれた近未来の描写は、時を経るにつれて古びるどころか、むしろリアリティをもって観られるようになった気がします。
他では見られないヨボヨボの顔でオタオタと転がる眼球を追いかけるトムの姿にも注目です。

11位 MAY 3.0

孤独な女性の哀しい恋が暴走する青春カルトホラー。
斜視と過保護な親の影響で人付き合いが苦手なまま育った主人公が恋をするも、ままならない状況に陥り精神が危うくなっていく物語です。
1時間かけて描かれるあまりにも暗く哀しい日々の根底には、それが愛という形にせよ親友にせよ、分かり合える相手を求めずにはいられない主人公の想いがあり、それゆえに期待をしては失望を繰り返す姿は痛ましく胸に響きました。
終盤30分での狂気も「キャリー」のような一種のカタルシスを伴ったカオスではなく、どこまでもひっそりと、最後まで孤独な主人公に救いの手を差し伸べようとする監督の願いがこもった印象的なラストでした。
お話としてはミニマルすぎてもう少しバックグラウンドが描かれても良かった気がしますが、そのパーソナルな自主制作感が良かったとも思います。

10位 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 3.0

スピルバーグらしい父性への渇望にあふれた実話ベースのクライムコメディ。
嘘をついて人をだますことに天才的な才能を発揮して、顔色ひとつ変えずにその場を切り抜けていく主人公の無邪気な軽快さは、犯罪者でありながら好感が持てます。
二人の宿敵でありながら相棒でもあるような不思議な関係性は、他の映画であまり見られないユニークなもので、物語が進むに連れて微笑ましくなっていきました。
主人公にとってのきっかけと着地点からは、子どもが両親の愛情で満たされるためには、自分に向けられる愛だけでは不十分で、両親がお互いに向ける愛情も必要なのだと感じられました。

9位 パニック・ルーム 3.0

緊急避難室のある新居に越してきた親子に降りかかる恐怖の一夜を描いたサスペンスです。
少ない登場人物、限られた空間ですが、このパニック・ルームの存在がキーとなって物語を盛り上げています。
敵役がやけに人間臭いキャラクターで得体の知れるところが、恐怖を削いでしまっており、フィンチャーらしかならぬマイルドな仕上がりです。
ストーリーにもフィンチャーらしい驚きがなく、世間的な評価はイマイチですが、個人的には00年代に流行したシチュエーションスリラーの先駆的な一本として十分に楽しめる作品だと思います。

8位 息子のまなざし 3.0

ドキュメンタリー出身のダルデンヌ兄弟によるサスペンスフルな人間ドラマ。
かつて自分の息子を殺した少年と出会ってしまった父親の葛藤を描いた物語です。
“息子”という原題が示す通り、単に出会っただけでなく、息子の未来を奪った少年の社会復帰を手伝う内に親子さながらの関係になっていくという状況設定が抜群で、より複雑な心境を観客に想像させます。
父親の内面描写を排除し、徹底的に出来事のみを積み上げることで復讐心にかられた父親がいつ一線を越えるのかとサスペンスが持続します。
少年の告白の度にじわじわと緊張感が高まり、ラストの製材所での父親の告白によって最高潮を迎えるのですが、その着地は何とも悩ましいものです。
赦したわけでもなく、救われたわけでもない。
安易に心地良い答えを提示することもなければ、絶望の淵に突き落とすこともないスタンスは物語としては物足りないです。
しかし、これから彼らはどうするのか、あなたならどうするか、そんな問いかけの余韻をエンドロールに残しています。

7位 ロード・トゥ・パーディション 3.5

映画界に進出するやオスカーを制したサム・メンデスが続いて手がけたマフィアの世界を舞台にしたドラマ。
良き父親でありマフィアの殺し屋でもある男がトラブルから妻子の命を狙われ、息子を連れて逃亡しながら反撃を期す物語です。
重厚でシリアスな人間ドラマかと思いきや意外とエンタメ要素が強く、特に無能なボスの息子ではなくやり手の殺し屋が差し向けられることでうまく中盤のサスペンスが盛り上がっていたと思います。
終盤はそうならざるを得ない展開で驚きはないですし、最後まで親子のドラマがそれほど深まらないのは残念でしたが、豪華かつ達者な役者陣にアイディアに溢れ構図のキマッたカメラ、そしてさりげなくも印象深い音楽といずれも高品質な構成要素がストーリーの物足りなさを十分に補い、全く飽きることなく楽しめました。

6位 戦場のピアニスト 3.5

ナチスドイツのポーランド侵攻から戦争の終結まで、迫害から逃れ生き延び続けたユダヤ人ピアニストの姿を通してホロコーストの恐怖と嘆かわしさを描いたパルムドール受賞作。
収容所での虐殺行為は映画やドキュメンタリーでよく扱われますが、収容所外での迫害を生々しく描いていること、そしてそれを英雄的人物ではなく、運良く逃げ延びただけの男の目線で描いていることがユニークで興味深かったです。
今作に登場するドイツ兵は傲慢には見えるものの、あまりにあっけなく殺害していく様にユダヤ人への憎しみは感じられません。
憎しみは同等以上の相手に抱くものだとするならば、今作でのドイツ兵はユダヤ人を人間とみなしていない感じが良く伝わってきてゾッとしました。
廃墟での二人きりの演奏シーンは生きがいだったピアノにようやく触れられた主人公の渾身の演奏によって、正に芸が身を助ける名場面のように見えますが、将校のその後の言動を見ると、芸術への賛美よりも戦争の最終局面における人間心理の愚かしさを感じてしまいました。

5位 アバウト・ア・ボーイ 3.5

ロンドンを舞台に父親の印税を頼りに仕事も恋愛も全てを適当に考えて生きるダメ男といじめられっ子の少年の交流を描いたヒューマンコメディ。
イギリス人らしいシニカルな笑いを交えながら、 2人のナレーションがかけ合いのようにそれぞれの心情を語り、テンポ良くストーリーを進めていきます。2人の間に生まれた奇妙な友情がそれぞれの問題を解決していく展開は心地良かったです。
自己中心的だった主人公が、徐々に人のために何かをすることの喜びを知り、さらには自分を犠牲にしてまでも少年を助けるクライマックスは心温まるものですが、あくまでもコメディとして軽めのエピソードにしているところに好感が持てました。

4位 28日後… 3.5

変則的ゾンビ映画の佳作。
圧倒的なスピード感が恐怖感を増していますが、それは単に走って追いかけて来るからでなく、スタイリッシュな編集が貢献している気がしました。
スーパーマーケットでの豪遊や身内の感染など定番の展開はきっちり押さえているところは好感が持てます。
人間の愚かさや良識や道徳の不確かさ、人間同士の信頼関係のもろさというこれまでダニー・ボイルが何度も描いてきたテーマは今作でも扱われつつ、その結末は異なっています。
劇場公開時は露骨なバッドエンドだったようですが、淡い希望を抱かせるハッピーエンド風のラストにして正解だったと思います。

3位 スパイダーマン 3.5

ヒーロー映画と青春映画の理想的なミックスが見られる大ヒット作。
キャラクターの造形が素晴らしく、特に主人公の親友がコメディリリーフでなく、主人公以上にピュアで真っ直ぐな人間であるのは新鮮でした。良き友であると同時に恋敵でもあり、更には後々に続く因縁も生まれるという役割過多になるのもうなずける魅力的なキャラクターでした。
街を飛び回るシーンの爽快感に比べて戦闘シーンの出来は今ひとつで、さえない悪役のビジュアルも相まって物足りない仕上がりです。しかし、その悪役もデフォーの怪演のおかげで、キャラクター自体は非常に魅力的になっています。

2位 シティ・オブ・ゴッド 4.0

リオのスラム街で生き残りそして成り上がる為に銃を取る少年たちの姿を生々しく描き出したブラジル発ギャング映画の傑作。
暴力、麻薬、縄張り、抗争と起こる出来事自体はギャング映画でおなじみのエピソードばかりですし、野心あふれる若者が成り上がろうとする展開も見慣れたものなのですが、今作では障壁となるはずの元締めや腐敗した警察といったより上層の存在感が薄く、ひたすら若者たちの物語であることが新鮮でした。
特にその年齢層の低さはショッキングで、特別激しい残酷描写があるわけではないのですが、そのギャップによって極めて暴力的な印象が強く残りました。
ただテンポの良い編集のおかげで陰惨な雰囲気にはなっておらず、エンターテイメントとして成立させているバランス感覚が素晴らしかったです。
写真家志望の少年を語り部として配置したことで、時間軸とエピソードの主役を自在に入れ替えながら物語ることを可能にしており、主役はこの語り部でも、ギャングのボスでも、取って代わる少年たちでもなく、暴力と犯罪がまるで文化のように定着したこの街であることを強調している気がしました。

1位 過去のない男 4.5

カンヌ映画祭でグランプリを獲得したカウリスマキの代表作。
暴漢に襲われ、記憶をなくした男が小さな幸せをつかむまでの物語です。
自分の身に降りかかった不幸に対して、なされるがままに流されていく男の姿は人生を達観しているかのようで、とても不器用なようでもあります。
あるべきものがあるべきところに静かに収まっていくストーリーは優しく、感情の発露がないからこそそのさりげない美しさが際立っています。


いかがでしたでしょうか。
2002年はハリウッド大作からヨーロッパや南米産の秀作まで幅広い年でした。
次回の記事では、1970年を取り上げます。

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