映画公開年別マイベスト 2021年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2021年で、8本の作品が3.0点以上でした。

8位 ウィリーズ・ワンダーランド 3.0

ニコラス・ケイジ主演のB級アクションホラーコメディの怪作。
閉鎖されたアミューズメントパークには人を喰らう人形がおり、そこに生贄として閉じ込められた男と施設を焼き払おうとする若者たちを描く物語です。
ケイジがいなくてもお化け屋敷型のホラーとして成立してはいますが、もしそうなれば凡庸で個性のない駄作になっていたと思います。
その存在一つでアクション要素を持ち込み、さらに笑いを引き起こしているパフォーマンスは素晴らしかったです。
極めて忠実に職務をこなし、休憩を取ることも怠らないパートタイマーの鏡のようなキャラクターの異質さが絶妙に可笑しく、最後まで種明かしのようなことをしない潔さも良かったです。

7位 フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊 3.0

実力派の俳優陣がこぞって出演したがる監督ウェス・アンダーソンの長編十作目。
テーマ別のエピソードを組み合わせた構成は雑誌の記事をそのまま映像化したような印象で、文章をビジュアル化していくことを楽しむような作りは、独特の映像世界を構築するウェスの本領発揮といった感じでした。
世界中からウェス風の街並みを集めた写真集が話題になりましたが、今作ではフランスのアングレームという街を丸ごとスタジオ化して脳内世界を映像化しています。
アスペクト比も自在に使い分け、今作で多用される4:3のスタンダードサイズは縦長の雑誌を見開いた状態を意識しているように感じました。
相変わらずストーリー性は希薄なのですが、独りよがりで難解なアート作品にはせず、自身のこだわりと観客への寄り添いを程良くミックスさせるバランス感覚はお見事でした。
街紹介と画家のエピソードが好みだったので後半はやや落ちてしまったのが残念でしたが、目で楽しむという点では全編通して飽きる暇なく楽しめました。

6位 コーダ あいのうた 3.0

アカデミー作品賞を得たヒューマンドラマ。
聾唖者の一家で唯一耳が聞こえる少女が自らを頼りにする家族と自身の夢との間で葛藤しながら成長する物語です。
夢への挑戦に家族との衝突、そして瑞々しい恋と詰め込みすぎゆえに苦悩の部分が浅く感じられてしまい、ドラマとしての深みに欠ける気はしましたが、その分テンポ良く爽やかな気分で観ていられる作りなのは良かったです。
心境の変化が唐突だったり試験のシチュエーションが他の受験者に不公平だったりと都合の良い展開が多いのも気にはなりましたが、演者の好演のおかげで絵空事でなく良き物語として受け入れられた気がします。

5位 スパークス・ブラザーズ 3.0

グラムの流れで世に出て以降、ニューウェーブを先取ったり映像の分野に進出したりとアートとエンタメの間を行き来しつつ、どのジャンルにもカテゴライズされない特異なバンドとしての地位を築いたスパークスの軌跡を追ったドキュメンタリー。
監督エドガー・ライトの愛が溢れ出ているのが微笑ましく、時系列で振り返る構成も分かりやすくて良かったです。
ミュージシャンから俳優、コメディアンまで著名人たちの手放しでの称賛が続くのでドキュメントとしては物足らず、もはやプロモーションビデオと化していますが、そうなってしまうのも頷けるほど楽曲と2人の佇まいは魅力的でした。

4位 秘密の森の、その向こう 3.0

大切な人が亡くなった時の喪失感と後悔に対する優しい眼差しが印象的なセリーヌ・シアマによるファンタジードラマ。
祖母を亡くした一家が遺品の整理にやって来て、8歳の娘が家の裏にある森の中で同じ年頃の少女に出会ったことから、在りし日の祖母と幼い母親との時空を超えた交流が始まる物語です。
家族と何気なく交わす挨拶が重要な要素として機能し、ストーリーの始めと終わりで大きく意味合いが変わる繊細な演出が素晴らしかったです。
少女の発する言葉が何周目の人生なのかと思うほど達観しており、設定からするとそれでも違和感ではないのですが、子ども同士で遊ぶ時のような無邪気さをもっと親に対しても見せてくれた方が、秘密の交流を通じた少女の変化を味わい深く感じられた気がしました。

3位 ラストナイト・イン・ソーホー 3.5

デザイナーを夢見る田舎娘が憧れのロンドンの服飾学校に入ってから、60年代に迷い込み事件に巻き込まれていくスリラー。
音楽を映像に見事にシンクロさせるセンスはエドガー・ライトの本領発揮といったところで、60’sの楽曲を幻想的に響かせ観客をその時代へと誘っています。
生まれ持った霊感で事件を垣間見た主人公がその謎を解き明かそうとする展開や、そこに隠された真実はミステリーとしてよくできたストーリーで楽しめました。
基本設定と原色がヒロインを照らす画面づくりは「サスペリア」を想起させ、結末の明らかな引用でもニヤリとさせられます。
後半に頻出する安っぽいホラー演出が作品の格を下げかけていますが、それを補って余りあるアニャのビジュアルとパフォーマンスは田舎娘の憧れを完璧に体現していて素晴らしかったです。
自己実現の代償を男たちに求められる女の苦しみというテーマは今風で、それが主人公の実生活にも重なるのかと思いきや、そうはならないのがドラマ的に物足りない一方、娯楽作品としてはそこを掘り下げずシリアスになりすぎない塩梅がちょうど良かった気もします。

2位 ヴィーガンズ・ハム 3.5

あらゆる”主義”を皮肉るフランス製ブラックコメディ。
期せずしてベジタリアンの人肉が看板商品となってしまった肉屋の夫婦の行動がエスカレートしていく様をコミカルに描く物語です。
グロテスクな描写はあってもヘタにスリラーに寄り道せず、終始コメディに徹しているのが好印象でした。
ベジタリアンの極端な思考を小馬鹿にするだけでなく、肉食の酷さもきっちり描き、さらにはグルメにもステータス主義にも全方位に対して毒を吐くスタンスが良かったです。
唯一物足りなかったのはラストで、ブラックさに輪をかけたイジワルな結末を期待してしまったのでややマイルドに感じてしまいました。

1位 あのこと 3.5

ヴェネツィアで金獅子賞を得た痛切なサスペンスドラマ。
中絶が違法だった60年代のフランスで望まぬ妊娠をした学生があらゆるプレッシャーに晒されながら理不尽な現実に直面させられる物語です。
彼女の首にかかった縄と評された密着カメラワークが秀逸で、第三者視点のカットが存在しないことで観客を主人公に同化させるだけでなく、引きの画を一度も見せないことで彼女が置かれた閉塞的な状況の息苦しさも感じさせます。
愚かな加害者の男対哀れな被害者の女という単純な構図にしないことで偏った視点が排されているのも良く、同性や親、教師、医師といったあらゆる社会からの外圧に1人で立ち向かわなければならなかった主人公の孤独を的確に表現していたと思います。
近いテーマで先発のクリスティアン・ムンジウによる傑作があるので、あちらの東欧の雰囲気も加味したヒリヒリ感と比べてしまうと一段落ちる気はしましたが、今作も十分な秀作でした。


いかがでしたでしょうか。
2021年は女性監督の活躍が光った年でした。
次回の記事では、2010年を取り上げます。

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