映画公開年別マイベスト 1979年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1979年で、9本の作品が3.0点以上でした。

9位 人口の夜景 3.0

ストップモーションアニメの世界でその名を知られる双子の映像作家ブラザーズ・クエイのデビュー作。
ストーリー性はほぼなく、路面電車に思いを馳せる男を描いた人形劇です。
人気のない夜の街を誰も乗らない路面電車が滑るようにゆっくりと走り抜ける様は幻想的で、夢想する気持ちに共感できました。
画面の多くを占める暗闇が陰鬱な雰囲気を作り出すと共に、この閉塞的な世界がどこまでも続いていそうな感覚を与えるのも良かったです。
何度も挿入される詩的な小見出しは分かるようで分からない表現でしたが、少なくともリズムを生む役割は果たしていたと思います。
展開や行動原理に理屈が通っているのでシュールとは感じませんでしたが、カメラの動きや演出にシュヴァンクマイエルの影響が感じられました。

8位 ブリキの太鼓 3.0

パルムドールとオスカーを得たフォルカー・シュレンドルフの代表作。
ナチスが台頭する不穏な気配の中、3歳で自ら成長を止めた少年の目を通してその家族の狂騒を描く物語です。
ジャンルごった煮のカオスな怪作で、叫び声でガラスが割れるファンタジーな設定はコミカルな要素として使われ、家族の空元気な賑やかさと戦禍に巻き込まれての崩壊はブラックコメディ的です。
そこに倫理的に物議を醸した性描写やグロテスクな描写が差し込まれるギャップが強烈なインパクトを残します。
エゴにまみれた大人の醜さを少年の視点で炙り出すのかと思いきや、主人公もなかなかのエゴイストで、戦争やナチスの存在すら遠い背景に感じられる混沌具合が凄まじかったです。

7位 異なる年齢の6人の女性 3.0

年齢が異なる7人のバレリーナの姿を順に描いていくことで、人の運命は世界のどこかで誰かと繋がり時代を超えてループしているというキェシロフスキらしい人生観を表現した短編の秀作。
40歳過ぎまでと言われるバレリーナのキャリアにおける肉体的表現力の発達と衰えを人生になぞらえ、成長の喜びがどこかで老いることの哀しみへと変わり、それを乗り越えて引き継ぐという新たな喜びを見出すまでが一週間の中で巧みに表現されています。
メッセージに説得力を持たせるためには、リアリティは重要でもリアルである必要はないと悟ったことを感じさせ、キャリアのターニングポイントと呼べると思いました。

6位 エイリアン 3.0

エイリアンという単語にモンスター的なイメージを植えつけたSFホラーの金字塔。
音もなく素早い動きで、物陰から突然黒光りした身体を表しては、またどこかに隠れてしまう生物。人間は触れることすらできず、その神出鬼没さに惑わされ、そのしぶとさを嫌悪する。
誰しもが身に覚えある恐怖体験を見事なエンターテイメントに仕上げています。
荒唐無稽になりかねないストーリーですが、シリアスに徹した演出とビジュアルの良さが醸し出す雰囲気で物語に説得力を持たせています。

5位 ルパン三世 カリオストロの城 3.5

宮崎駿の映画監督デビュー作であり、名作と名高いアニメーション映画の金字塔。
スリリングな冒頭のカーチェイスから、暗殺集団とのアクション、城への侵入のサスペンス、おなじみのコミカルなやり取りにプラトニックなロマンスとエンターテイメントとしてあらゆる要素が詰め込まれていて飽きさせません。
ルパンがやけに真面目で、ずる賢さやいやらしさといった持ち味があまり出ていないのが気になりましたが、ジブリ風ルパンとしては納得かつ満足の仕上がりでした。

4位 アルカトラズからの脱出 3.5

実話をベースとした脱獄ものの佳作。
意地悪ではあっても悪徳と言うほどではない所長や看守、敵対する囚人からつけ狙われるほどほどの恐怖、地道にコツコツと掘り進めていく過程、あまりにもシンプルな脱獄計画。そして脇役はおろか主人公すら背景や内面の感情がほとんど描かれることはありません。
こうした要素で構成されたストーリーはドラマ性に欠け、成し遂げた時のシーンさえ盛り上がらないのですが、劇的な要素を極力排除したストイックな演出が生み出すリアリティは必見です。
淡々と進んではいきますが、後半のハラハラさせるシーンではしっかりとサスペンスを作ってくれるので退屈はしません。

3位 マッドマックス 3.5

オーストラリア発のバイオレンスアクションシリーズの一作目。
秩序が崩壊した世界のようでありながら、平穏な家族の暮らしや娯楽も並行して描かれる違和感がなんとも言えない恐怖感を生んでいました。
その世紀末的な異様な世界観が、見慣れた欧米の映画でないからなのか、作り上げたものなのか初めは戸惑いました。
全体的に粗削りで、クオリティの高い作品ではないかもしれませんが、それゆえに一度観たら忘れられないインパクトがあります。
ひたすら暴力が連鎖するストーリーには筋書きはあってないようなもので、クライマックスの虚しい復讐はやるせない気持ちになりました。

2位 クレイマー、クレイマー 4.5

親であること、夫であること、妻であること、自分らしくあること。生き方を見つめ直す時、幸せを何と捉えるかを考えさせられる名作ヒューマンドラマ。
物語の序盤では、ワーカホリック気味に働くことが家族のためだと思い込んで家庭を顧みなかった夫、不満を溜め込んだあまり唐突に爆発して子どもを傷つけてしまった妻、それぞれ自分がどうしたいかしか考えていません。
息子との2人暮らしを経た夫が人の気持ちを大切にできるようになったのは、親子が本音の感情をぶつけ合ったことで、自分の感情と相手の感情が違うことを理解できたからだと思います。
その感情の変化を丁寧に描くので、どうしても2人に感情移入してしまいますが、裁判の過程で妻にもそれを理解させることで、観客にこの物語の視点も単一的であり、妻には妻の物語があったはずであることを気づかせる手腕が巧みでした。
父と息子の変化を表す有名なフレンチトーストのシーンも良いのですが、主人公の顔がビジネスマンから父親に変化していく演じ分けも素晴らしかったです。

1位 アマチュア 4.5

映画制作に没頭しすぎるあまり、家族からも見放される男を描いた身につまされるお話。
娘を撮るために買ったカメラがきっかけで、主人公は記録映画の撮影を任されます。
カメラを通して周りを見ること、そしてそれをつなぎ合わせて一つの作品とすることの面白さを発見した男はそれにのめりこんでいきます。
周囲が望んだものを撮らないことによる軋轢、そして撮ることしかしなくなったことによる家族との心の乖離の果てに、男は顧みることのなかった自分自身にカメラを向けるのです。
自分が良いと信じて突き進む道が、人に認められた時の喜び、人に喜ばれない時の不幸は何かに打ち込んだことがある人ならば誰もが共感できるでしょう。
キェシロフスキ自身の想いも多分に投影されているであろう初期の傑作。


いかがでしたでしょうか。
1979年は王道のオスカー受賞作からアニメまで幅広く傑作が生まれた年でした。
次回の記事では、1969年を取り上げます。

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