映画公開年別マイベスト 1985年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1985年で、15本の作品が3.0点以上でした。

15位 未来世紀ブラジル 3.0

近未来のディストピアを独特なビジュアルとシュールな展開で描いたテリー・ギリアムの代表作。
暗く汚い雰囲気の街並みと権力に管理された未来像は「ブレードランナー」と並び80年的なディストピアを象徴し、お役所仕事と理不尽な力が支配する世界観はカフカ的でもあって魅力的でした。
作中で行われる行為の恐ろしさにしては、ギリアムの出自ゆえのブラックユーモアによって恐怖よりも不気味で奇妙な印象が残り、それが独特な世界観をとっつきやすいものにしています。
しかしその計算された知的なアプローチは不条理な世界には相性が悪くも感じられ、どんなに想定外の不可解な展開を見せても、それが想像の範疇は超えてこない原因になっている気がしました。
特に何度も挿入される夢のシーンには理性が残りすぎていて、現実世界を描いたシーンのビジュアルの作り込みに負けているのが残念でした。
ブラックな結末の後味の悪さは好きなのですが、物語ることを放棄するようなぶっ飛んだ展開も観てみたかったです。

14位 死霊のえじき 3.0

ゾンビ映画というジャンルを確立したロメロによる伝説的三部作の最終章。
ゾンビが地上に溢れかえり、生き残った人間は地下生活を余儀なくされた世界を描いています。
人間の愚かさや醜さをテーマとするスタイルは今作でも健在で、ゾンビを教育しようとするマッドサイエンティストと私利私欲に走る軍人を通じての人間模様が物語の中心となっています。
ホラーテイストが過去二作よりも弱まり、代わりにアクション要素が増したと評されますが、実際に人体損壊ショーが披露されるのはクライマックスになってからです。
終盤の一連のシークエンスは本領発揮と言うべき素晴らしさで、有名な教育されたゾンビの復讐シーンも印象的でしたが、あっさりとして後味の悪さもない結末は物足りなかったです。

13位 ポリス・ストーリー 3.0

名スタントの数々で知られるジャッキー・チェンの代表作。
香港国際警察の刑事が麻薬シンジケートを一網打尽にするために奮闘する物語です。
急斜面と二階建てバスとショッピングセンターの3アクションありきでストーリーが構成されたそうですが、良くも悪くもそれが良く分かる作品でした。
スタントはどれも語り草になるのが当然のクオリティで、特にガラスをこれでもかと割りまくるクライマックスは圧巻でした。
中盤の気の抜けたコメディパートはいつまで続くのかと思ってしまいましたが、逆にラストは唐突すぎて驚きました。

12位 ペイルライダー 3.0

西部劇がジャンルとして衰退した時期に登場した最後のウエスタンヒーローのイーストウッドがおよそ10年ぶりに手がけた80年代を代表する西部劇。
虐げられる弱者の元に颯爽と現れて去っていくヒーローを描いたストーリーは王道ですが、主人公の超常的な位置付けは「荒野のストレンジャー」、マセた少女に言い寄られるのは「白い肌の異常な夜」、牧師の装いは「サンダーボルト」など、過去に演じてきたイーストウッド印をこれでもかと散りばめた集大成的な内容でした。
ロングコートに身を包んだ主人公の出立ちも見事にキマっていましたが、敵にリンチされるイーストウッドお決まりのシーンがないのは残念でした。
中盤ダレ気味なのは難点ですが、悪役のキャラが立っていることで三段構えのクライマックスがしっかり盛り上がっているのが良かったです。

11位 フェノミナ 3.0

イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェント80年代の代表作。
スイスを舞台に虫と交信する能力を持つ少女が殺人事件に巻き込まれていく姿を描いた物語です。
ストーリーは「サスペリア」を焼き直してマイナーチェンジした程度ですが、虫とメタルと残虐描写という監督の趣味を詰め込んだ味付けによって不思議と個性あふれる作品に仕上がっています。
そしてゴブリンの音楽は今作でも素晴らしく主張していて耳に残ります。
特殊な能力をはじめ、有名な役者の娘という設定や夢遊病など何重にもなった要素がどれも活かしきれていないのが何とももったいないのですが、本作が出世作となったジェニファー・コネリーは特別な力を持った少女という存在に説得力を与えるのに十分な佇まいでした。

10位 刑事ジョン・ブック/目撃者 3.0

ピーター・ウィアーのハリウッド進出一作目にして初のオスカーノミネートを受けた出世作。
殺人現場を目撃したアーミッシュの少年を守り、事件の裏にある警察の腐敗を暴こうとする刑事の奮闘と、異文化との交流を描くサスペンスドラマです。
ありがちな状況設定ではありますが、終盤まで攻防が繰り広げられることはなく、それが地味ながらも今作のユニークさに繋がっています。
モーリス・ジャールの荘厳な音楽も味わい深かったです。
恋愛要素よりも父性を求める少年との交流をもっと掘り下げても良かった気はしますが、ラストシーンでの切ない別れは大げさにならない塩梅で良かったですし、老人がかける言葉、そして一本道でのすれ違いというさりげなさも素晴らしかったです。

9位 デモンズ 3.0

公開年に本国内では「エルム街の悪夢」よりヒットした80年代イタリアンホラーの代表作。
奇妙な映画館へ招待された人々が、上映されるホラー映画とシンクロするように次々と化け物に変わっていく物語です。
序盤はランベルトが父親譲りのジャッロ風味演出でミステリアスな雰囲気をじわじわ盛り上げますが、ライティングなど随所にアルジェントの息がかかっているのを感じられ、いざ事態が進み始めると一気にお祭り騒ぎへ舵が切られます。
その後はモトリー・クルーやビリー・アイドルに後押しされるように、グロさとアクションの入り混じる滅茶苦茶かつパワフルな展開となり、終末感漂うクライマックスへと突き進みます。
不良グループを投入しながらほぼ意味がないのはもったいなく、展開にもう一つ二つ捻りがほしかったですが、B級ホラーとしては素晴らしい出来でした。

8位 山の焚火 3.0

アルプスの山腹に暮らす一家の崩壊を描いたスイス製の静謐なドラマ。
自給自足に近い一家の聴覚障害を持つ息子と面倒見の良い娘の間に起きる事件を発端に平穏な生活が一変する物語です。
その暮らしを描く前半は何も起こりませんが、何気ないシーンで窓の外の背景がそびえるアルプスという画になるロケーションはあまりにズルく、ドキュメンタリーを観ているようで退屈はしませんでした。
後半突然ストーリーは進展しますが、そこで起きているはずの出来事をカメラは親切に映してくれず、画面外の音やその後の雰囲気から察するしかなく、そんな映像でしか不可能な表現に挑むスタンスはハネケに通じるものを感じました。
そこに祈っても沈黙するベルイマン的な神の在り方が示されることで、神話のような荘厳な雰囲気が生まれているのが印象的でした。

7位 バタリアン 3.5

ゾンビ映画というジャンルをパロディにしたホラーコメディ。
立て篭もった建物の周りをゾンビに包囲されたり、仲間がゾンビに変化したりする展開では定番の流れをなぞりつつ、頭を潰しても死ななかったりと時折外してくるところがうまいです。
ゾンビと遭遇した時のパニックぶりが笑えました。
ゾンビが喋ったり、知恵を働かせる設定も斬新に感じました。
それをシリアスなトーンでやればゾンビものとしての良さが薄れるだけの間抜けな演出になりそうですが、コミカルな中で笑いどころとして取り入れたことでとても効果的になっています。
まさかの結末もブラックで良かったです。

6位 ブレックファスト・クラブ 3.5

大人と子どもの狭間で葛藤するティーンの心情を描いた80年代を代表する青春映画。
ダサい堅物のガリ勉、親の言いなりのスポーツバカ、家庭環境に恵まれない不良、八方美人のお姫様、サブカルオタクの変わり者。
それぞれの理由で土曜の朝に登校させられ、図書室で作文を命じられた5人の高校生が衝突しながらも心を通わせていきます。
語られるバックグラウンドはあまり深掘りされず、結末も爽やか風ではありますが成長や変化を感じられるわけでもありません。
ストーリーはあってないようなものなのですが、それでも心に響くものがあるのは、誰もが誰かに少しは共感できる部分がある青春映画のプロトタイプ的なキャラクターのおかげで、彼らの発する台詞にも断片的に共感できる要素があることが今作の最大の成果と言えます。

5位 グレート・ウォリアーズ/欲望の剣 3.5

オランダの鬼才ポール・ヴァーホーヴェンの渡米後最初の作品。
中世ヨーロッパを舞台に、野蛮な傭兵軍団と彼らに妃をさらわれた領主たちの抗争を描く物語です。
トレードマークのエロとグロが散りばめられた内容はメジャーなエンタメ史劇には程遠く、ヒットしなかったのも納得ですが、それがまたとない強烈な個性を放っています。
視点が悪役であるはずの傭兵たちに寄っているので下劣な彼らがキャラとしてとても魅力的に見えますし、生き延びるために風見鶏っぷりを発揮し続ける妃のプライドの無さはヒロインというより悪女に見えます。
それでも何となく正義は勝つ的な結末に向かっていくのは、後に「スターシップ・トゥルーパーズ」で見せる王道ハリウッド映画への皮肉を感じさせました。

4位 コマンドー 3.5

午後のロードショーでのヘビーローテーションでもお馴染みの、カルト的な人気を誇る良くできたB級アクションです。
オープニングクレジットが終わるまでに敵役の悪行と主人公の山奥での娘とののどかな暮らしをハイテンポで描き、冒頭20分足らずで設定を説明しきってしまう勢いは、この映画の見どころはそんな背景描写ではないと言わんばかりで素晴らしいです。
豪快なアクションも楽しいのですが、言葉遊びやブラックジョークが詰め込まれた台詞回しが一番の魅力で、シュワちゃんの棒読みがさらにシュールな味わいを加えています。

3位 カラマリ・ユニオン 3.5

カウリスマキ初期の傑作コメディ。
ストーリーを追うのがバカバカしくなるほどシュールでとぼけた展開の連続で成り立っています。
全員同じ名前で、似たような恰好をしているけれど別におそろいでもない男たち。この一団には一応の動機と目的があるものの、そこにほとんど意味はなく、何となく命を落としていきます。
人生なんてこんなものだとタバコをふかしながら言われているような、肩の力が抜けたカウリスマキ節が楽しめます。

2位 アフターアワーズ 4.0

なぜか物事が真っ直ぐ前に進まない不思議な一夜をとぼけたトーンで描いたスコセッシらしからぬ不条理コメディ。
後に「ホーム・アローン」でケビンの両親役を務める二人が共演していることにニヤリとさせられました。
主人公がカフェで読書するところまではいつもの退勤後のひと時でしたが、その後は寝たくても寝られない、電車に乗りたくても乗れない、会いたい人に会えない、帰りたくても帰れない、とあれもこれも思うように事が運ばず時間だけが過ぎていく奇妙な一夜の物語です。
スルスルと滑っていくようなカメラワークが印象的で、合理的な因果関係を超越して転がっていくストーリーにマッチしていました。
前半に散りばめられる不思議な出来事の数々が中盤になると紐付き始めますが、そこに伏線回収的な爽快感はありません。
むしろ犯してもいない罪によって罰が迫ってくる不条理さが増していき、さながらカフカのような悪夢的世界観でした。
結末からは、この一夜はプログラムされたように規則的で先の読める仕事を繰り返す日々にうんざりした主人公が精神的に迷い込んだ迷宮だったことを示唆しているようにも感じました。

1位 バック・トゥ・ザ・フューチャー 4.5

エンターテイメントとしての映画の最高峰。
芸術性やメッセージ性の一切を放棄して、さらにはストーリーの細かい整合性や説得力を無視してまでも、ただ観客を楽しませることに注力しています。
その潔さとサービス精神、そして何よりキャラクター造形の素晴らしさのおかげで、頭を空っぽにして楽しむことができます。
SFアドベンチャーと青春映画を巧みにミックスし、憧れと共感を両立させた稀有な作品です。


いかがでしたでしょうか。
1985年はエンタメとしての映画の価値を示すような娯楽性の高い良作が数多く生まれた年でした。
次回の記事では、1979年を取り上げます。

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