映画公開年別マイベスト 2018年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2018年で、14本の作品が3.0点以上でした。

14位 BEYOND BLOOD 3.0

00年代にアメリカ製のスプラッタホラーとは一線を画した生々しい暴力描写とひねりのあるストーリー、そしてあふれる作家性を備えた作品が相次いで生まれ、ニューウェーブ・オブ・フレンチホラーと呼ばれました。
今作はその当事者となった監督たちを含む関係者へのインタビューを通して、ムーブメントの起源やインパクト、そして終焉と次の世代の台頭までを整理された構成で分かりやすく教えてくれます。
当事者に寄り添いすぎて客観的に評価する視点には欠けている印象ですが、監督たちが制作時の背景や想いをたくさん話してくれるのは興味深かったですし、アメリカのホラーとフレンチホラーの比較の話もおもしろかったです。
ロジェは「トールマン」公開時のインタビューでもハネケを痛烈に批判していましたが、映画祭時のエピソードが笑えました。

13位 ゾンビーズ 3.0

ゾンビと人間が共存している世界の高校で共学が導入されたことから学園は二分され、対立の中で禁じられた恋や友情が育まれていく過程を描いたディズニーチャンネルオリジナル作品。
ハイスクール青春コメディとしては先行作品の焼き直し感があるものの、そこにスクールカーストとは別の対立構造を持ち込んでおり、それが社会風刺的になっているのがおもしろかったです。
とはいえそこに説教臭さはなく、その分メッセージとしての深みもないのですが、その軽さがこの手のジャンルへの要求を作り手がよく理解していると感じられて良かったです。

12位 search/サーチ 3.0

失踪した娘の行方を追う父の姿が全編PCとスマホ画面上で展開されるサスペンスミステリー。
手持ちカメラによるプライベートフィルム風の映像で構成される作品は映像を撮ることが手軽になったこの20年で急増しましたが、SNSやビデオ通話が一般的になったことで成立している今作の登場によって、この手のジャンルも新たなフェーズに入ったことを感じさせられました。
画面を見つめる視線を表すようなカメラの動きやクローズアップを駆使することで、画的に単調になるのを避ける工夫も良かったです。
父親の捜査能力が高すぎるのは気になるところではありましたが、一つ一つ丹念に手がかりを追いかけていく過程がおもしろかったです。
娘の苦悩を深掘りして深刻な展開にせず、あくまでエンタメに徹した判断も良かったと思います。
ただ最後の最後で偶然だよりの展開となったのは残念でしたし、真相の特定以降は急にテンポが落ちる割にそれほどの驚きがある訳でもなく、弟を問い詰めるあたりがピークでした。

11位 デッドプール2 3.0

不死身のアウトローヒーローの活躍を描いた大ヒットアクションコメディの二作目。
下ネタにブラックジョーク、メタ的なギャグに残虐描写と前作の良いところをしっかりと引き継いでいます。
ヒロインをあっさりと退場させ、主人公が仲間を増やしていく過程に重きを置いたストーリーになっており、その過程すら自ら茶化してギャグにしているのが良かったです。
笑いどころは一作目より増えた印象でしたが、その反面アクションは物足りず、クライマックスが中盤の護送車でのシーンに遠く及んでおらず、その場面においてはギャグもイマイチなのが残念でした。

10位 イングマール・ベルイマン:1957年 3.0

スウェーデンが世界に誇る巨匠ベルイマンの制作背景に本人やリヴ・ウルマンら関係者のインタビューから迫るドキュメンタリー。
多作だったベルイマンが最も生産的で、巨匠への階段を登るきっかけとなる2つの傑作「第七の封印」と「野いちご」を撮った1957年を軸としながら、60年代の代表作「仮面/ペルソナ」や自伝的大作「ファニーとアレクサンデル」、さらには脱税容疑を受けた70年代、監督業から遠ざかった90年代にまで言及しており、そのキャリアと生涯を俯瞰的に振り返る構成です。
家庭を顧みず、愛人を作り、自分の子供の数さえ間違えていたことは創作活動に全てを捧げたが故と弁明の余地を与えながらも、国内で絶大な権力を得たことで元々気性が荒く高慢な面のあったベルイマンのエゴが肥大化していった晩年の様子を舞台関係者から容赦なく語らせる率直な作り手の姿勢が良かったです。
カメラを人間の魂をとらえる道具と考えたベルイマンが語る、何百万人も自身の作品を観るがその内1人でも心の風景に光が差した人がいればその作品は成功だという言葉が印象的でした。

9位 ボヘミアン・ラプソディ 3.0

ビートルズやストーンズと並んでイギリスが世界に誇るロックバンドであるクイーンのフロントマンであり、ロック史上でも屈指のパフォーマーだったフレディ・マーキュリーが味わった栄光と苦悩を描いた大ヒット作。
元々日本での人気が高かったクイーンですが、今作の大ヒットによって第三次ブームが巻き起こりました。
メンバーに恋人、家族と多くの人との関わりが描かれるのですが、序盤の控えめな姿は成功と共に薄れていき、傲慢さが目立つようになっていきます。しかし恋人とのひと時では変わらぬ姿を見せていたのが、性的指向が明らかになって以降は自分勝手で傲慢な人間へと変わり果てています。
バンドとしての成功をダイジェスト的に見せる前半の中でその性格付けの変化がしれっと起きるので、感情移入がしづらかったです。
むしろ冷静沈着なブライアン、イケメンで血気盛んなロジャー、イジられ役で癒しキャラのジョンとメンバーの描かれ方の方が魅力的に感じてしまいました。
名曲の誕生秘話的なシーンがたくさんあるのは楽しかったですが、クライマックスのライブエイド再現シーンは努力賞的な評価は与えられたとしても、だったら本物の映像を観た方が良いと思ってしまったのが正直なところです。

8位 運び屋 3.0

80歳を超えてなお制作意欲が衰えず、事実をうまく流用することで驚異的な制作ペースと一定以上のクオリティを維持する偉人イーストウッドが久しぶりに自ら主演も務めたクライムドラマ。
老人がメキシコの麻薬カルテルの運び屋となった実話に基づいたストーリーで、家庭を省みてこなかった男が人生の終盤において人の道を踏み外す一方、夫として父としての居場所を見つけるまでを描いています。
もっとサスペンスフルにもドラマチックにもできそうな題材ですが、抑制の効いた演出で主人公と周囲の人々との関わりにフォーカスしているのが良かったです。
言葉使いは乱暴ながらもマイノリティにも分け隔てなく接し、自分を追いかける捜査官に人生を説いてしまうほどコミュニケーション能力の高い主人公が、家族との関係構築だけはうまくできないのが皮肉でした。
甘めの結末は物語の収まりとしては良いのですが、メッセージとしては少し物足りなかったです。

7位 ドッグマン 3.0

犬のトリマーとして平凡な人生を送る男が悪友に翻弄され犯罪に手を染めていく姿を描いたマッテオ・ガローネによる寓話的なドラマ。
犬がたくさん登場しますが、物語上の彼らはただ状況を見つめ吠えるだけで決定的な役割は果たしておらず、主従関係のような歪んだ友情を象徴する存在として配置されている気がしました。
悪友の暴力的な支配が情けなく憐れな男を惨めな末路へと追いやる展開は不条理なようで、虎の威を借る狐的な心理も示すことにより、出口のない閉塞感を際立たせると共に、ままならない人間関係を描いているのが良かったです。
娘の存在を描くなら「自転車泥棒」の息子のような視点があるともっと切なさが胸に響いたと思うので、その点はもったいなかったです。

6位 ハウス・ジャック・ビルト 3.0

鬼才トリアーがシリアルキラーを題材にし、その残酷な描写が物議を醸した問題作。
主人公が殺人を繰り返していく様を生々しく描くと同時に、強迫性障害で潔癖症の男が殺人を犯したらどんなことを考えるのか、その心理を描いています。
そしてそれを本人が誇らしげに回想する声と神のような視点からツッコミを入れるかけ合いナレーションが進行していきます。
最初の衝動的な犯行に始まり、二度目の間抜けな殺人まではその滑稽さを笑えるのですが、三度目からどんどん計画的かつ残忍になっていく主人公の行動には不快感が増していきます。
殺人に慣れた主人公から滑稽さは消え、それを芸術と結びつけて必死に正当化しようとするナレーションが痛々しいです。
中盤までは事件の結果だけを見れば理解不能な犯行が、どんな心理の元に行われたのかが良く描かれていておもしろかったのですが、終盤の観念的な展開は冗長で退屈でした。
もっと直接的な描写で端的に落としてくれた方が、切れ味鋭いブラックコメディになっていたと思います。

5位 グリーンブック 3.5

おバカなギャグや下ネタ、そしてキツめのブラックジョーク満載のコメディで知られたファレリー兄弟の兄ピーターが意外な路線変更でアカデミー作品賞を受賞した実話を基にしたドラマ。
人種偏見を持つ白人は粗野で卑しく、差別を受ける側の黒人に品と知性がある設定は60年代からよくあるパターンで、正反対な二人が行動を共にする内に打ち解けていく展開もお決まりのものです。
人種差別を主題としながらも、あくまでそれは設定上のもので、エピソードを生み出す為のきっかけにすぎません。
そこにヒリヒリとした切実さが足りないのでドラマとしての深みには物足りなさがありますが、その代わり爽やかな後味を残す良質な友情物語としては良くできており、散りばめられたユーモアのおかげもあって楽しめました。
終盤で大雪の中、睡魔と戦いながら家路を急ぐ二人のシーンでは色んな嫌な予感をさせられ、そこでどちらに舵を切るかで作品の性質がまるで異なるものになっていたと思いますが、良くも悪くも心地良い方に進むあたりに今作のスタンスがよく表れている気がしました。

4位 ハロウィン 3.5

ホラー映画史に残る名キャラクターの殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズとその最重要ターゲットの40年越しの宿命の対決を描いたシリーズ通算11作目。
1作目から直接繋がる物語と位置付けて制作され、シリーズをリスタートさせるのに相応しいヒットとなりました。
序盤は記者を登場させて背景説明をさせた上にマスクまで届けさせてしっかりお膳立てし、中盤には若者の被害者を登場させスプラッタホラーとしての期待にもきちんと応えるだけでなく、長回しで旧作のファンも満足させるサービス精神が素晴らしかったです。
要素を盛り込みすぎてやや間延びした感はありますが、クライマックスの直接対決でのアクション映画のようなノリも楽しかったです。

3位 バスターのバラード 3.5

ネットフリックスでの配信リリースとなったコーエン兄弟による6遍のオムニバスウエスタン。
ままならない人間の生き死にを嘆き悲しむよりは達観して嘲笑うシニカルなスタンスや、欲に駆られる人の営みをコミカルとシリアスの狭間を行き来しながら描く巧みなバランス感覚、そして唐突なバイオレンスというコーエン兄弟のエッセンスが散りばめられた集大成のような作品に感じました。
公開方法に加えてオムニバス構成であることも、映画が最早2時間の拘束を強いるものとして必ずしも受容されるわけではない現実に対して、積極的に立ち向かっているようで好印象でした。
内容的にも、初めの2話にはニヤリとさせられ、3話目にはゾッとして、4話目には意表を突かれ、5話目には強烈な皮肉と様々な死に様に共通する無常観を少しずつ異なる角度から描く構成がとても良かったです。
そしてそれらを総括する後書き的な6話目の存在も、オムニバスでありながら一つのテーマ性を感じさせてくれました。

2位 ゴーストランドの惨劇 3.5

フレンチホラーの旗手パスカル・ロジェによるショッキングな理不尽系ホラーの佳作。
得体が知れないながら妙に生々しい怪物に、2人の少女への唐突な暴力、そして無自覚な妄想をトリックに使った構成と、さながら同じくフレンチホラーの傑作として名高い「ハイテンション」のロジェ版とも言える内容でした。
ストーリーを物語ることを半ば放棄するかのように、惨劇へと最短距離で突き進み、トリックも中盤であっさりと種明かしをする潔さが心地良かったです。
暴力の激しさに比べると残酷性はあまり高くないのですが、精神的な苦痛は存分に味わえました。
お化け屋敷的な驚かせ方が多いのは気になりましたが、少女たちの顔面崩壊ぶりや、希望をチラつかせてから絶望のどん底に突き落とす終盤の展開も楽しかったです。

1位 へレディタリー/継承 4.0

ホラーというジャンルの領域を広げた傑作として話題を呼んだアリ・アスターの長編デビュー作。
祖母の死をきっかけに崩壊していく一家を描いており、目には見えない邪悪な力が家族を侵し、狂っていく過程は「ローズマリーの赤ちゃん」や「シャイニング」といった名作ホラーの系譜に連なるものでした。
序盤は娘、中盤は母、終盤は息子と主たる視点が移り変わっていき、その移行がスムーズなのが素晴らしかったです。
娘の視点からは自身が一体何にとらわれ、周囲で何が起きているのか分からない不気味さ、母の視点からは謎が積み上がっていく一方で家庭が崩壊していく生々しさ、息子の視点からは想像を絶する真実が明かされると共に直接的にショッキングなカットが連発される驚きと、多様な恐怖を重層的に味わうことができました。
トニ・コレットの演技はその表情もリアクションも大げさなのにも関わらず、不思議とやりすぎに感じないリアリティがあり、ともすればバカバカしくなりかねないシーンにも説得力を与えるという重要な役割を果たしていたと思います。


いかがでしたでしょうか。
2018年は映画史上でも稀にみるホラーの傑作が豊作の年でした。
次回の記事では、2007年を取り上げます。

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