映画公開年別マイベスト 1951年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1951年で、6本の作品が3.0点以上でした。

6位 夏の遊び 3.0

スウェーデンの巨匠ベルイマン初期の秀作。
バレリーナの13年前のとある一夏の思い出が哀しい記憶へと変わる過程をフラッシュバックで描いていく物語です。
前半は若い男女が惹かれ合い結ばれるまでの模様が瑞々しく蘇りますが、現在の彼女がまとう悲壮感が不穏な予感を漂わせます。
そして後半に起こる悲劇をずっと引きずっていた彼女が、そこにどんな答えを見出すかが後半の見どころとなっていきます。
この頃から神の不在や人生の無意味さに言及するあたりにベルイマンらしさを感じさせつつ、決して難解な精神探求の世界に突入することなく、ドラマとして納得感のある結末に至るのが良かったです。
ただそのラストの大事な心境変化を映像で語らず、モノローグで処理してしまうところには若さを見せてしまった気がしました。
とはいえ映像の美しさは既に折り紙付きで、何度も登場するバレエのシーンはモノクロゆえにスポットライトが作り出す陰影が際立ち、幻想的で素晴らしかったです。

5位 欲望という名の電車 3.0

舞台劇を映画化した名優マーロン・ブランドの出世作。
共演者たちが同年のアカデミーで演技部門を総ナメする中で唯一オスカーを取り逃がした彼の存在感が作中で抜きん出ているのが何とも皮肉です。
そのナチュラルな演技は他の演者とのギャップを感じさせ、新しい世代を象徴するキャラクターを演じる上で最適だった気がします。
過去の栄光に固執するあまり精神が崩壊していく女を描いた物語としては制作年代の近い「サンセット大通り」を思い起こしますが、狂気と妄想に取り憑かれた恐ろしい物語だったあちらに比べると、こちらは自覚的に嘘を吐くしたたかさがあり、人間の愚かしさを強く感じられました。
終始、粗野で下品な男が容赦なく現実を突きつけることで起こる衝突が描かれますが、それが乱暴な物言いではあっても正論なのが辛く、危うい精神状態の女を追い詰めていきます。
しかし女のバックグラウンドは台詞で軽く触れられる程度なので今ひとつ心理が深掘りされていない印象で、それゆえになぜ男が初めからあんなにも突っかかるのか違和感が否めず、あまりに感情的な人間同士の罵り合いに置いてけぼりにされた気がします。

4位 地球の静止する日 3.0

ミュージカル映画の名作で知られるロバート・ワイズの初期の代表作であるSFドラマ。
原子力を手にして地球を破壊しかねない人類に対して警告をするためにやって来た宇宙人が、下宿先の一家と交流しながら、有識者への接触を試みる様を描いた物語です。
前半は少年との交流を中心に展開され、ホームドラマのような雰囲気の中で宇宙人が人類への理解を深めていく過程が描かれていておもしろかったです。
後半でその正体が露見し始めてからはスリリングな雰囲気へと転換して期待をあおられるのですが、そこからは誰の視点で結末へと向かっていくかが曖昧になり、結果的に物語の着地に説教臭さが否めなくなってしまったのが残念でした。
前半の交流が結論にあまり活かされていないのも、演説への納得感を弱める要因となっていてもったいなかったです。

3位 ミラノの奇蹟 3.0

カンヌでグランプリを得たデ・シーカの風刺の効いたファンタジー。
孤児として育ち清らかな心を持った青年が貧民街で暮らし始め、その善良さで奇跡を呼び寄せる物語です。
後の作品を観ればデ・シーカがユーモアにも長けた監督であることは明白なのですが、ネオレアリズモ真っ只中の時期にこのトーンの作品を撮っているのは驚きました。
とはいえ、そこに強烈な社会風刺を仕込んでいるのが素晴らしく、特に人間の愚かな欲望が溢れ出す場面はゾッとします。
ドゥオーモの上を飛ぶ拍子抜けのラストはあっけらかんとして良いのですが、もっと毒のある容赦ない結末を見てみたかった気もしました。

2位 地獄の英雄 3.0

オスカー受賞監督となって以降も傑作を連発していた時期のワイルダー作品としては地味な位置付けの秀作。
ジャーナリストとして一旗上げようと目論む男が落盤事故の現場に遭遇し、事故をドラマチックに仕立てるために画策する物語です。
前作「サンセット大通り」同様、名声欲に駆られた人間のおぞましい執着心と、偶像を作り出しては使い捨てる大衆の浅はかさを強烈に皮肉っています。
まんまと巻き起こった熱狂がエスカレートしていくクレイジーさが素晴らしかったです。
しかし女がアッサリと主人公を上回る強欲さを見せるのはイマイチで、まして主人公に良心の呵責が芽生える展開とするのなら、徐々に立場が逆転する対比を見せた方が効果的だった気がしますし、そもそも主人公には最後まで醜くあがいた挙句に破滅していく姿を期待してしまいました。

1位 見知らぬ乗客 4.0

交換殺人をテーマにとったヒッチコックの代表作。
理不尽な巻き込まれ方でなく、主人公にもやましい部分があることがストーリーの肝になっています。
テニスの試合の首振りシーンが生む不気味さ、テニスとライターのカットバックが生むサスペンス、クライマックスで暴走するメリーゴーランドが生むスリルなど、効果的な演出の数々は映像演出の教科書とも言えます。

いかがでしたでしょうか。
1951年は巨匠の代表作が輝きを放った年でした。
次回の記事では、1962年を取り上げます。

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