映画公開年別マイベスト 2003年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2003年で、13本の作品が3.0点以上でした。

13位 アイデンティティー 3.0

90年代後半から00年代に流行したどんでん返し系映画の一つとして名の上がることの多いサスペンスミステリー。
豪雨による洪水でモーテルに足止めをくらった人々が一人ずつ何者かに殺されていった先で、彼らの共通点と驚愕の真実が明らかになる物語です。
導入のピタゴラスイッチ的な人物紹介パートを過ぎると、善人っぽい人の奮闘むなしく明らかに怪しい人と死ぬ気配強めな人が勝手な行動をとり続けるクラシックなミステリースタイルが展開され、懐かしく微笑ましかったです。
終盤の収集がつかなくなってきたところで真実が明かされるのですが、非難されるのも納得な種明かしとなっています。
推理を楽しみながら観ていたら文句を言いたくなるとは思うのですが、一応分かりやすい伏線はたくさん張ってくれていたり、もはや笑えるオチまで用意してくれているサービス精神は嫌いでなかったです。

12位 バッドサンタ 3.0

テリー・ツワイゴフらしいはみ出し者への優しい眼差しが詰まったクリスマスコメディ。
ショッピングモールでサンタの扮装をしてイベントをする仕事に就きながら泥棒稼業で金を得ては、酒とタバコと女遊びに溺れるダメ男が、いじめられっ子の少年に付きまとわれて一緒に暮らし始めたことから2人の奇妙な交流が始まる物語です。
クズなのにやけに人を引き寄せる主人公をビリー・ボブ・ソーントンは説得力を持って演じていますが、無茶苦茶なお話の展開はさすがにファンタジーの域でした。
しかしそれでも控えめなテンションで描いてくれるおかげで離脱せず、むしろクセになるテンポに引き付けられました。
やっていることは下劣なのになぜかほっこりさせられ、丸く収まったのかよく分からない結末も微笑ましくて良かったです。

11位 ビッグ・フィッシュ 3.0

ホラ話と空想と、思い出話と作り話の境界をあいまいにすることで荒唐無稽な話が味わい深いものへと変わる不思議なファンタジー。
社交的であることが人生を切り拓き、豊かなものにしていくストーリーはティム・バートンらしからぬ気がするのですが、主人公が変わり者であることには変わりなく、その物語に登場するキャラクターたちを含め、彼のアウトサイダーへの愛情をポジティブに転換させたような作品です。
前半のイマジネーションあふれる物語にワクワクさせられた分、後半ややトーンダウンしていくのが残念でした。
息子の物語が始まった時にはまた期待が高まるのですが、割と平凡で拍子抜けし、父の偉大さを変に感じてしまいました。
葬儀の参列者によって空想と現実の境界がまたあいまいになる結末は良かったです。

10位 フォーチュン・クッキー 3.0

リンジー・ローハンを一躍ティーンのスターに押し上げたファンタジーコメディのヒット作。
バンドに情熱を傾ける高校生の娘と堅物の母親の体が入れ替わってしまうことで巻き起こる騒動を通じて互いの苦労を理解し合っていく物語です。
設定はありがちで展開は予定調和であることは間違いないのですが、うまく要素が組み合わさっていて王道の面白さでした。
マーク・ウォーターズはリンジーの魅力を見事に引き出し、ジェイミー・リー・カーティスもスクリームクイーンではないコメディエンヌとしての側面をしっかり発揮しています。
バンドメンバーとの絡みが薄いのは物足りなかったですが、演奏する音楽はカッコよかったと思います。

9位 マッチスティック・メン 3.0

00年代に入ってキャリアを見事に持ち直したリドリー・スコットによるクライムムービー。
精神疾患に悩まされる詐欺師の男の家に知らぬ間に14歳に成長した娘が押しかけてきたことから、ぎこちなくも父性に目覚めていく物語です。
犯罪映画らしいスタイリッシュさもありながら、いきなり担うハメになった父親としての役割にまんざらでもない主人公と娘のやり取りはコミカルで良かったです。
終盤にどんでん返しが待っているのは90〜00年代の犯罪映画らしさを感じられましたが、その後さらに裏をかくような奇策に走ることなく、ハートウォーミングな結末を付け足すあたりにベテランの余裕が感じられ、中盤までの雰囲気を楽しんだ観客に優しい演出でした。

8位 スクール・オブ・ロック 3.0

教師になりすまして規律の厳しい小学校に潜り込んだミュージシャン志望の主人公が、授業を無視して生徒たちにロックを教え込む音楽コメディ。
音楽を活かしたギャグは楽しく、エンドロールまで含めてサービス精神旺盛なのが良かったです。
ストーリーがベタな展開であるのは良いのですが、抑圧からの解放がテーマにあるのなら、ルームメイトの彼女や生徒たちでばかりでなく、主人公はもっと権力者に噛み付くべきでした。
騙くらかそうと四苦八苦する方がコメディ的なシチュエーションを作りやすいのは分かるのですが、終盤の保護者たちに対した場面くらいは歯向かってみせてほしかったです。
導入の部分でも、単なるわがままを言って家からもバンドからもつまはじきにあうのでなく、契約をエサに売れ線の曲を求めるレコード会社に反発してバンドメンバーと亀裂が生まれるような人物像にした方が生徒たちの心酔ぶりに説得力が出たような気がします。

7位 ファインディング・ニモ 3.0

人間に捕らえられてしまった息子を探すカクレクマノミの冒険を描くピクサーの大ヒット作。
親子愛とアドベンチャーという鉄板とも言える要素を掛け合わせたストーリーはテンポが良く楽しかったですし、海の中の世界観の設定も良くできていて違和感なく観られました。
語りにおいて秀逸だったのは過保護な親視点になっていることで、ディズニーアニメであれば過保護な親に反発し、子どもが自身の可能性を証明するための冒険に出る物語になるのが定石だった気がしますが、今作は親が子を探す旅の過程で可能性を自ら封じ込めていたことに気がついていく構成になっています。
そのため無謀さを勇気とすり替えられているような不信感を抱いて冷めてしまうことなく、自然と共感することができました。
それでも子どもがしっかり楽しめるアドベンチャーと笑いを失っていないバランスの良さがヒットの要因だったのではないかと思いました。

6位 コーヒー&シガレッツ 3.0

11のショートストーリーが織り成すワンシチュエーションでの対話と、その隙間を埋めるコーヒーとタバコの物語。
ジャームッシュらしいとりとめのないやり取りの中に醸し出される微妙な気まずさや絶妙なユーモアが楽しく、各話に必ず入るテーブルを真上からとらえるショットも印象的でした。
ロベルト・ベニーニが代わりに歯医者に行ってくれる話のシュールさと、イギー・ポップが謎に遠慮がちな話のバカバカしさと、アルフレッド・モリーナが家系図を持ち出す話の分かりやすいオチはそれぞれ一つの短編としてよく出来てたと思います。
出演者の意外性と短尺のおかげで何とか逃げ切っているような話もありましたが、前のめりに物語ることよりも、行間を読ませることの方がいかに丁寧なストーリーテリングが必要か良くわかる秀逸な短編集でした。

5位 グッバイ、レーニン! 3.5

東西に分断されていたドイツを舞台に、統一による混乱と歓喜が国中を包む中、心臓発作を起こした母がそれを知って倒れないよう奮闘する姉弟をコミカルかつハートウォーミングに描いた物語。
西側の文化が一気に雪崩れ込んできたことへの人々の驚きや戸惑いを背景に、あくまで母だけのために部屋に東ドイツを作り出す様子が楽しく、東ドイツ製のピクルスの瓶をゴミから漁って煮沸消毒して再利用したり、監督志望の友人と協力してニュース映像を作ったりと、その奮闘ぶりはおもしろかったです。
しかし、有名な空飛ぶレーニン像のシーンが物語のクライマックスになっており、その後の30分は家族の物語としてうまく収束したと思う一方で、東ドイツの再現をもっといろんなアイディアで見せてほしかった気もしてしまいました。
ところどころのキューブリックへのオマージュは微笑ましかったです。

4位 ミスティック・リバー 3.5

幼なじみの3人を縛る因縁が招いた悲劇を描いたミステリー風味の人間ドラマ。
前半は、犯人は誰なのか?という謎がストーリーを引っぱっていきます。捜査の過程は極めて地味ですが、せまい人間関係の中から少しずつ浮かび上がっていく真実を丁寧に映し出しています。
後半、事件の真相が明らかになっていくに連れ、観客には悪い方悪い方へと歯車が噛み合っていたことも同時に分かってきます。2つの事件が同じ夜に起きたことは偶然であり、宿命でもあったのかもしれません。
あの時車に乗っていなければ、から始まる様々なたらればが積み重なってやるせない気持ちが残ります。
この因縁が2人ではなく3人にまつわっていた設定を最大限に活かしていた気はしませんし、ラストはすっきりしませんが、これは3人の物語の結末でなく、これから先も脈々と続いていく悲劇の連鎖の一部を切り取ったものだと思うとしっくりきました。

3位 キル・ビル Vol.1 3.5

趣味をごった煮で詰め込んだタランティーノ4本目の長編作品。
偏見もいとわない日本愛と多数出演した日本人キャスト、そしてユマ・サーマンやルーシー・リューの話すカタコトの日本語も話題となりました。
お馴染みの時間軸を前後するストーリー構成は見られるものの、基本的にお話は主人公の復讐というシンプルな一直線で進み、その分演出上のお遊びを純粋に楽しめました。
バイオレンス、アニメーション、チャンバラとやりたい放題の中にも選曲を含めたタランティーノ独特の編集センスがあふれており、単なるおふざけのパロディに終わらないおもしろさがあって良かったです。
監督の自己満足と言えばそうなのですが、それもここまで突き抜ければエンタメとして成立することを教えてくれる作品であり、二部構成の前半としての話の切りどころも絶妙でした。

2位 エレファント 3.5

公開当時はコロンバイン高校での悲劇が記憶にまだ新しく、それをドキュメントでなくフィクションの題材としたことがセンセーショナルに報じられ、抽象的な内容も賛否を呼んだパルムドール受賞作。
作中で描かれる生徒の多くが犯人が標的としたジョックと呼ばれるカースト上位の生徒たちではなく、彼らの朝が何事もないありきたりなものである程に、こういった犯行の理不尽さと、それがいつ誰の身に降りかかるとも知れない恐ろしさを感じさせます。
極力演出を排し、表情を映すことも避けようとするようなカメラワークは登場人物の特定を拒み、単純な加害者と被害者に区分けすることを拒否しているかのようでした。
生徒たちの内面やバックグラウンドを描くわけでもないのに都度都度名前を表示する演出には、彼らは誰一人として名もなき被害者Aではなく、それぞれの人生があったのだという主張を感じました。
パルムドールという看板から想像するようなクオリティが高い作品とは思いませんし、数日で撮り終えたのではないかと思える撮影素材そのままのような粗っぽさは解釈を観客に委ねすぎな気はしますが、そこにパッケージされた内容には心に響くものがあるのも確かでした。

1位 ハイテンション 3.5

00年代に開花したフレンチスプラッタホラーの作品群の中でも先駆的かつ入門編的な作品。
分かりやすいストーリーとキャッチーな怖さ、派手な血しぶきにショッキングなどんでん返しとサービス精神旺盛な作りで飽きる暇なく楽しめました。
特に作品のピークとも言える最初の襲撃シーンはカットバックの多用でサスペンスをしっかり作り出しながら、残酷描写も忘れない素晴らしいシーンでした。
終盤の種明かしはズルさが否めませんでしたが、ミスリードとさえ呼べないレベルのだまし方なので、もはやそのどんでん返しは添え物程度に感じて不快感はなかったです。


いかがでしたでしょうか。
2003年は暴力や怒りをそれぞれの切り口で描いた作品が上位を占めた年でした。
次回の記事では、2011年を取り上げます。

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