映画公開年別マイベスト 2001年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2001年で、13本の作品が3.0点以上でした。

13位 アザーズ 3.0

「オープン・ユア・アイズ」で名を上げたアメナーバルのハリウッド進出作となったスリラー。
病で日光を浴びられない2人の子どもたちと3人の使用人と共に屋敷で暮らす主人公が超常現象に見舞われる恐怖と謎を描いたストーリーです。
オカルトホラー的な前半は薄暗い画面の陰影で恐怖を醸し出す巧みさと、突然大きな音を出す陳腐なこけおどし演出とが同居する奇妙なテイストでしたが、物語が一気に動き出す中盤からはスリリングな展開で引き込まれました。
種明かしも単なるサプライズとするのではなく、一家の哀しみと寂しさを強調しているのが良かったです。

12位 ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 3.0

変わり者一家の再生を描いたウェス・アンダーソンの出世作。
ウェスは変わり者やはみ出し者を愛情たっぷりの眼差しで描くのを得意としていますが、今作は一家全員のみならずそれを取り巻く人々までもが変わり者という変人映画となっています。
後の作品で繰り返し描くことになるバラバラになった家族の再生というテーマも今作で確立しています。
ストーリー性の弱さという弱点を章立てにすることで補う手法も今作で身につけています。
父の余命がわずかと知って集まってきた家族でしたが、そう簡単に仲睦まじくはなれません。
しかしここでの共同生活が再び一家を結び付け、父がその命をかけて家族を再生させたことを感じさせる葬儀のシーンは、スローの憎い使い方も合わせて、味わい深いものでした。

11位 マルホランド・ドライブ 3.0

カンヌでの監督賞を始め各映画賞で受賞を果たしてデヴィッド・リンチの代表作となり、難解な内容に数多のリピーターを生んだ怪作。
意識と記憶と願望が入り混じり、人格の分裂と入れ替わりが繰り返される構成は「ロスト・ハイウェイ」で確立したフォーマットに乗っ取っています。
ただそこで扱われる感情が嫉妬と怒りと後悔という負のループから、野望が打ち砕かれて失望となる転落に変わっているので、前半と後半のギャップによってより悲劇的な印象を与えます。
90分頃までは、行動力があり野心あふれる女性と記憶を失って困惑と混乱の中をさまよう女性という二人の関係を軸に、ハリウッドの映画業界とその裏で暗躍する組織というサスペンスを成立させているのが巧みでした。
ラストの数十分では散りばめられていたモチーフたちが主役となって観客を翻弄しますが、その時点では既に作品世界に引き込まれているので、その置き去り感が魅惑的な映像体験に感じられました。

10位 スパイキッズ 3.0

元凄腕スパイ一家の活躍を描いたコメディシリーズの一作目。
「オースティン・パワーズ」のくだらなさはそのままに、下ネタを取り除いて家族向けにしたような内容でした。
主役のしっかり者の姉と弱虫な弟のコンビが可愛らしく、その周りでロドリゲスファミリーの面々がとぼけたキャラクターで固める布陣が良かったです。
スパイらしいツールの数々はワクワクしますし、戦況が二転三転する盛りだくさんのストーリーも楽しかったです。

9位 トレーニング デイ 3.0

新人麻薬捜査官の悪夢のような初出勤の1日を描いたクライムサスペンス。
パワハラどころではない、やりたい放題の先輩が悪事に手を染める姿を目の当たりにし、これは必要悪だと吹き込まれても正義を貫く主人公は良かったのですが、その強い信念の拠り所はあまり伝わってきませんでした。
デンゼル・ワシントンの威圧的なオーラはすさまじく、2時間続く緊迫感はその存在によってもたらされているといっても過言ではありません。
ただ、これがキャリア最高の演技というほどではなく、アカデミー受賞はそれまで善人役を演じることが多かったことによるギャップと、これまでのノミネート歴との合わせ技一本という気がします。
これ以降はなぜか演技が評価されづらいアクションやサスペンスへの出演が多くなっているのが残念です。

8位 バーバー 3.0

名脇役ビリー・ボブ・ソーントンを主演に据えたコーエン兄弟によるクライムドラマ。
小さな町に暮らす平凡な床屋の男が少しの欲望を抱いた為にあらゆる物事の歯車が少しずつ狂い、関わる人々の人生を大きく狂わせていく物語は傑作「ファーゴ」を思い起こさせました。
身の回りの人々と出来事を冷めた目で見つめる主人公による淡々としたモノローグとモノクロ映像により、シリアスでハードボイルドな雰囲気が強調されています。
事件が起こっても機械のように毎日髪を切り続ける主人公の受け身の生き方は原題通りまるでそこに存在していないかのようで、罪に対する罰が勝手に彼をすり抜けていくような展開が皮肉で良かったです。
ただ中盤以降は展開不足な印象で、特に事故後のエピローグ的な部分は長い割に物語が意味を成すことに貢献しているように感じられず、切れ味の悪い着地でした。

7位 ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 3.0

性別という明確であり、曖昧でもあるテーマに真っ向から挑んだ半ミュージカル映画。
尺の半分近くが演奏シーンであり、作品のメッセージは歌詞に乗せて語られます。観客の反応が終始絶賛でも批判でもない中間的なところはテーマとのリンクを感じさせます。
ストーリーを軽視し、演奏シーンにアニメーションや回想シーンをつなぎ合わせたスクラップブック的な印象で新鮮でした。
ただ、クオリティの高い楽曲や映像的なおもしろさが前半に偏っていて、後半はややトーンダウン感は否めませんでした。

6位 ピアニスト 3.0

カンヌでグランプリを受賞したミヒャエル・ハネケらしい変化球の切ないラブストーリー。
過干渉の母親と共依存関係の二人暮らしを送り、欲求を抑えつけて生きてきた女性の不器用な愛を描いた物語です。
偏った環境が性癖を歪ませ、閉鎖的な環境がその歪みに気付かせない悪循環の末に、愛着表現の仕方が分からないまま恋をしてしまった主人公のどこか滑稽で、それでいて生々しい姿が哀しかったです。
すれ違いの末にたどり着くラストでナイフを突き立てた時の表情には、初めて人間らしい感情の発露が見られます。
母親と男とピアニストという職業と決別し、一歩前に踏み出すための通過儀礼的な一連の経験がいかに苦痛を伴うものであったかを物語る素晴らしい表現でした。

5位 ロード・オブ・ザ・リング 3.5

ファンタジー文学の名作を映像化した三部作の第一弾。
ヒットを受けてのシリーズ化ではなく、制作段階から三部作として構想されたことで、今作では旅の仲間が集まっていく過程を贅沢に時間をかけて描いています。
おかげで大長編小説の映画化にありがちな背景や設定の説明不足は感じられず、原作未読でもすんなりと世界観に入り込めました。
その分、第一章の宿命として、これからというところで終わってしまう物足りなさはありました。
とはいえ、作り込まれた世界観を見事に映し出す映像はそれだけでも一見の価値があります。
剣に弓矢に斧といった中世のようなアナログな武器を使って森の中で闘いが繰り広げられるクライマックスは、後の大規模な戦闘シーンに比べると地味ではありますが、その分生々しい迫力があって好みでした。

4位 es 3.5

70年代に実際に行われた監獄実験を脚色したショッキングなシチュエーションスリラー。
謎や不可思議な要素は登場せず、このような状況下で人間の心理がどう変わっていくのかを実際の実験に基づいてリアルに描いており、並のホラーよりもはるかに恐怖を感じられます。
実際には、暴行が精神的なものでとどまっている内に実験は中止されたそうですが、もしもそのまま中止されずにエスカレートしていたらを描いているとも言えます。
恋人との描写やクライマックスでの急にポップな演出など、首をかしげたくなる箇所もありますが、観客の心に強烈なインパクトを残すパワーは間違いなくあります。

3位 ノー・マンズ・ランド 3.5

ダニス・タノヴィッチの監督デビュー作にして最高傑作の戦争ブラックコメディ。
設定のアイディアが秀逸で、三人が置かれたシチュエーションに紛争を象徴させ、それを取り巻く軍やメディアの自分勝手さを皮肉たっぷりに描いています。
共通の知り合いがいて盛り上がるシーンはボスニア紛争を題材にしているからこそ、単なる偶然ではなく、彼らがかつては同じ国民として生きていたことを感じさせる切ない場面でした。
ただ中盤以降はやや説教臭くなりすぎた印象で、国連軍の善良な兵士の役回りには説得力が欠けた気がしました。
何も解決せずやるせない結末が素晴らしかっただけに、後半は現地に置かれた三人にもっとフォーカスして描き切ってほしかったです。

2位 アメリ 4.0

公開当時はオシャレなミニシアター系映画としてもてはやされ、今ではクレームブリュレの映画として認知されているファンタジックでダークなユーモアにあふれたコメディ。
ストーリー上まったく必要のない情報を早口でまくし立てる冒頭の人物紹介からイマジネーションが爆発しており、想像力を可視化していくような演出とシュールな主人公のキャラクター、そしてエピソードを羅列したようなストーリーが楽しく目が離せませんでした。
ファンシーな雰囲気の中に時折ブラックな笑いをはさんでくる辺りに作り手の意地の悪さが感じられて良かったです。
盲目の老人の手を取り、駅まで案内しながら目に映るもの全てを描写していく場面は、人に意味も理由もなく幸せを与えようとする主人公と、そのクレイジーさを素敵な魔法のように描くギャグが炸裂したこの作品を象徴する名シーンでした。
しかし中盤以降の証明写真をきっかけにしたロマンスは、ストーリーに一本の筋を通した推進力となっている一方、作品の自由な雰囲気を削いでしまったようにも感じました。

1位 ゴーストワールド 4.0

高校卒業直後のモラトリアムをアウトサイダーへの共感たっぷりに描いてカルトムービー化した傑作コメディ。
一歩先に現実と向き合う親友に焦り、優越感と愛情を取り違えた歪な恋愛をし、感情のコントロールができずに周囲を振り回す主人公の痛ましい姿をユーモアを交えて描く物語です。
周囲の大人をバカにして、メインストリームにいる同級生をガキと見下すことで自己を保ってきたハイティーンにとって、社会への適合は個性を失うことであり、大人になるための苦しい通過儀礼であるという「ライ麦畑でつかまえて」から変わらない惨めな青春の物語は、いつの時代も一部の層の心を慰めてくれます。
変わらないことを象徴するバス停の老人の旅立ちは、成長という変化を受け入れた主人公の心境を表している気がしました。


いかがでしたでしょうか。
2001年はヨーロッパ製のミニシアター系作品に勢いがあった年でした。
次回の記事では、2012年を取り上げます。

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