映画公開年別マイベスト 2004年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは2004年で、6本の作品が3.0点以上でした。

6位 パッション 3.0

熱心なクリスチャンとして知られるメル・ギブソンがキリストの受難を鞭打ちシーンの痛々しい描写を筆頭に容赦ない表現で描き、賛否を巻き起こして大ヒットとなった作品。
イエスが捕らえられる場面に始まり、拷問され、処刑され、復活するまでをいくつかの有名な場面のフラッシュバックを交えながら見せてくれます。
観念的な表現に逃げず、具体的な描き方をしてくれるので、聖書の物語を詳しく知らなくとも登場人物とイエスの関係性さえ知っていれば話についていけました。
公開当時批判を浴びたように、反ユダヤ的で親ローマ的な印象は否めませんし、それ以前に人物描写が表面的すぎて再現VTRの域を出ていない気はしますが、それも聖書に疎い人間にとっては分かりやすかったと思います。

5位 マシニスト 3.0

クリスチャン・ベールの驚異的な役作りが話題となった心理スリラー。
一年間も不眠症に悩まされる主人公の身の回りで不可思議なことが巻き起こり、次第にその精神が追い詰められていく物語です。
ミステリアスな展開に加え、工場、空港のダイナー、生活感のない部屋といった主人公の内向きな性質を表すロケーションが良く、青とグレーがかった画作りも含めて良い雰囲気でした。
それだけにタネが明らかになってからの展開に期待しながら観ていたのですが、丸く収めることには成功しているものの、その結末は物足りなさが否めませんでした。
タネ自体はそれほど練られた感じはしませんし、「ファイト・クラブ」を観ていたら不眠症と聞けばすぐにピンときてしまいます。
真実が明らかになってからの展開にもう一工夫あれば傑作と呼べそうだっただけに、もったいなかったです。

4位 ショーン・オブ・ザ・デッド 3.0

00年代に入って全速力で追いかけてくる身体能力の高いゾンビが人気を博した時期、ロメロ印のノロノロゾンビは恐怖よりも笑いの対象になりつつありました。
そんな空気感を敏感に察知したのかは分かりませんが、昔ながらのスタイルのゾンビと男女数人で立て篭もる伝統的な展開を用いて徹底的にふざけまくった今作は、ゾンビコメディの金字塔となりました。
クイーンのシーンを筆頭に音楽にのせたハイテンションのギャグシーンも楽しいのですが、個人的にはいらないレコード投げやメンバー構成のあるあるネタなど、イギリス映画らしい皮肉の効いたシーンの方が好みでした。

3位 海を飛ぶ夢 3.5

事故で寝たきりとなって以来、数十年家族に世話をしてもらって生きてきた男が尊厳死を望んだことで、家族の間に巻き起こった論争がやがて世間をも巻き込んでいく人間ドラマ。
カトリックの国であるスペインで論争を巻き起こしたことは想像に難くありません。
重苦しいテーマを扱いながらも、観客がそれを我が事として考えてしまうように分かりやすく落とし込んだストーリーが良かったです。
孤独と絶望の果てにそこから逃避する為の悲観的な死を選ぶのでなく、家族や周囲の人々からの愛を感じるからこその合理的で理性的な決断として描かれているので、主人公の感情の動きに納得感があります。
神父との口論のシーンは主人公の考えと本作のテーマを分かりやすく解説する機能を果たしていますが、神父を単なる盲信的な人物ではなく、それなりに筋の通った主張をさせるあたりは絶妙なバランス感覚でした。
恋愛要素が分かりやすい感動を生んではいますが、もっと家族の葛藤にフォーカスして深く掘り下げた物語を観てみたかった気もしました。

2位 ナポレオン・ダイナマイト 3.5

この作品にとっての不幸は、公開当時に最低な邦題をつけられたことではなく、未だにその話題ばかりが先行し、内容が語られることが少ないことかもしれません。
そのゆるい笑いは唯一無二で、もれなく変な登場人物、不思議な家族とペット、主人公が興じる謎の遊びの数々、やたらと長い受話器コード、突然のキレキレダンスと挙げだしたらキリがないほど、ツッコミ待ちでボケまくっています。
カメラワークや演出も、彼らの言動につっこむどころかボケを重ねており、特にダンスのシーンではこれぞクライマックスと言うべき見事なアンサンブルを見せてくれます。

1位 ミリオンダラー・ベイビー 4.5

生きることの意味、命の重み、血を超えた心の交流と不条理な人生。
イーストウッドの名匠としての地位を確固たるものとした名作。
頑固で孤独だが面倒見が良く、若者のメンター的役割を果たす老人という後の傑作「グラン・トリノ」とも共通する役柄をイーストウッドは今作で確立しています。
2人の関係を見守る語り部としてモーガン・フリーマンを配したことも素晴らしい効果を上げており、深刻な物語に寓話のような印象を与えています。
二度登場する家族とのシーンはどちらも胸が張り裂けそうなほど悲しいエピソードでした。
公開当時はその後味の悪さも話題となりましたが、前半では最後には救いが待っている感動の物語かと思わせておいて、後半に容赦のない結末を突きつけることで、尊厳死の是非という倫理的問題や神の不在という宗教的問題をも超えた人の生き様というより普遍的なメッセージを伝えている気がします。


いかがでしたでしょうか。
2004年は奇しくも尊厳死をテーマにした傑作が複数生まれる一方で、コメディの秀作も放たれた年でした。
次回の記事では、2015年を取り上げます。

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